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月詠は身体をそっと起こして、帯の後ろに携えた小刀の鞘を外す。
そして帯を緩めた。

「へええ…なるほど…そうなってたんだ…」
月詠は銀時に答えずに、自身の着物の襟にもその手をかけたが…
「おおっとお~いい。ちょっとお、待て待て待て、月詠!
そこからは俺にも出来る。やめてもらおうか。
この先は俺の自由にさせてもらう…いいだろ?」
「……(にやり)あい…分かったでありいすよ…」
「その郭言葉も無理して使うな。
遊女を相手にしている気分は避けたいのさ。普通にしゃべれば?」
銀時が先程の心中とは反対のことを口にする。
まったくこれだから男ってえヤツは…と女である作者も言ってみる。


「残念~。もうこれは口癖になっているからの…
普通の言葉使い?何だそれは?
そんな言葉使いなぞ、とっくに忘れてしもうたわ。無理でありいすよ。
それこそ右利きのやつが左で箸を持つようで、非常に苦しいものになっちまうでありいす!」
「ええ?そんなものなの?」
「そう…仕込まれるんでありいすよ…小さい内に…里の言葉が出ないようにな…
吉原の遊女はの、田舎娘が多い故…
地方訛りを消すための言葉使いなんでありいすよ、郭言葉というやつは…」
「………そうなのか…」
「そうなのよ!これでいいか?くすっ」
「はは…なんか妙だ。可笑しいぞ?そりゃ」
「だろう?ははは」

銀時は月詠を抱きしめた。
月詠も抱き返すように銀時の背に腕を回した。
そして銀時の肩にもたれかかる。


「……銀時……普通の女で……いいのでありいすね?…」
「…ああ…いいぞ…自然にしてろ…」
「わっちに…出来るでありいすか?…
あまりにも吉原で長く生き過ぎてしまったわっちに…
女であることを棄てて生きて来たわっちに………」
「ん…無理しない程度で…いいさ…」
「…あい…出来るだろうか…」
「出来るさ…その着物を脱いで見せろ…全部…俺に…」
「…ぎ、銀…時…わっちは…わっちは…」
「月詠…女になれ…いま…俺の前で」

「あ、明かりを…銀…とき…」
「……消さねえぜ…」






この後はもう…あれやこれや、です。



しかしWJの方で月詠があまりにも痛々しくて…
あんな目をした月詠が…!
でも銀さんがかっこいいですね!
あのラスト2Pの、銀さんのかっこ良かったこと!
「その女」ねえ…
「俺の女」にしか読めないわ。
あ、そうか、夫婦設定だったんでしたね。
それも銀さんが言ったんでした。
GW明けまで続きが見られないなんて残念ですう。

私はまた銀時×月詠の話を書く事を決めました。
このWJでの連載が終わったら、またここで書きます。
本にするかどうかは未定ですけれど。

銀時×月詠
「tenderly」



さて拙著「目覚めなければいい」のお話にも
月詠はたくさん登場しています。
土方に「いくらでヤらしてくれるかい?」なんて言われたり
阿伏兎に「今度はゆっくり会いたいねえ」なんて言われてますが
月詠は「あぶなんとか!」と、名前が覚えられない(笑)
ですが後半では銀時といい感じです♪











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螺鈿  その4 09.4.24



<このお話はその3の続きです






高そうな中華料理店に入った。
神威はこんなボロい街のどこにこんな高級そうなお店があったのだろうと不思議でならない。
このおじさん、お金持ちなんだなあ…

「さあ、何がいいかな?嫌いなものは有るか?」
「ううん、無い。何でも食べるよ」
「そうか。ウエイター!」
鳳仙が指をならし、給仕を呼んでいろいろな物を注文する。
その慣れた様子に、ますます神威は首を傾げて…
おわあ…本物のお大尽みたい…とどきどきした。

「あの…あまり時間が無いんです…早くに戻らないと、母も妹も心配しちゃうといけないから…」
「おお、そうか。分かった。急いで食べような」
にこにこと鳳仙が笑いかける。
神威はちょっと焦る。
だって大人がにこにこと笑いかけて自分を見る時は、
「そういう目的」が有ることが多いというのを、経験上分かっている。
だから油断できない…

神威はじっと鳳仙を見た。
だが鳳仙はにこにこ顔だ。

「神威君…どこに住んでいるの?」
「この…奥のビルの一角です…」
「お母さんと妹さんと一緒に?お父さんは?」
「お父さんは、出稼ぎに行ってます…えいりあんばすたーなので、宇宙のどこかに…」
「な、な、何?夜兎でえいりあんばすたーだと?まさか、星海坊主か?君のお父さんは?」
「あ、はい。そうですけど…?何か…?」


鳳仙はたまげた。
椅子から転げ落ちそうになった。
この見事な珊瑚色の髪と青い目の少年が、あの星海坊主の息子だと?
信じられん!
この子のどこに、星海坊主の面影があるというのか!
ない、ない、ない!まったくない!
星海坊主は真っ黒い髪に、茶色の瞳だったはずだ。
なのにこの子が星海坊主の子だと?
何を間違ってこんな美形な子が生まれる!
…………いや待て。
あの戦闘能力の高さは、言われてみれば星海坊主の血か。
この美しい容姿は、母親譲りということか。
……何とうまくやったもんだ、あのハゲ坊主めが…!


「ああ、ああ、君のお父さんとはね、昔に『一緒に』
闘ったことがあるんだ…それで驚いたんだ。そうか。
こりゃあ大した偶然だな。星海坊主の息子に助けられるとは…ふむ、すごいことだ!」
「そうなの…お父さんの若い頃…ね?くすっ」
「そうだ……若かったんだ…君のお父さんはとても強かったぞ…ああ、今も、だろうな…」
「そうなんだ…」
「そうだよ…さあ、食べなさい…遠慮はいらん」
「あ、はい、じゃあいただきます」

神威は運ばれてきた料理に手を伸ばす。
どんどん食べた。
鳳仙は料理よりも酒を多く飲んだ。



「お母さんと妹さんは…その…元気なのか?こんな小さい君が働きに出るなんて…」
「ううん…お母さんが病気で…
お父さんも、もう長いこと帰ってきてくれないからお金が無くなっちゃって…
お母さんの薬代もかかるし、神楽が、ああ妹ね、神楽も大きくなってきたから
ご飯もたくさん食べるようになっちゃったし…」
「…そうかそうか…星海坊主は今どこら辺で闘っているのだ?」
「確か…グランバルド星って聞いたけど…」
「ああ、グランバルド。知っているぞ。あそこに出たえいりあんはそんなに手強い奴だったか」
「もう2年ぐらい帰って来ていないの…手紙も来ないし…お金も届かないんだ。
で、お母さんが内職していたんだけど、お母さんの具合が悪くなって…
だから俺が働かないと駄目なんだ…だから野菜市場に行ってるの…」
「ふむ…そりゃあ大変だ…お母さんは大丈夫なのか?」
「……ううん…なんだかどんどん弱くなっていってるみたいに見える…ううっ…ぐすっ」
「ああ、悪い…そうだったのか…神威君…それは辛かったねえ…」
「ぐすん、ぐすん」
「それでトマトを…ふむ。あのトマトは偉大だった!
わしを救ってくれたのだからな。だからあのトマトの功に報いる。
あのトマトが結んでくれたわしと君の縁をもっと深くしてやるぞ」
「え?何?トマトの縁?それなあに?」
「ウエイター!」
鳳仙が給仕を呼ぶと、またたくさんの料理を注文した。

「え?おじさん!俺、もうこれで…」
「トマトの代わりにわしが君の家族に料理をご馳走する。
包んで貰うから、それを持って帰りなさい。
たくさん頼んだからね、君の分も有るから、夜には一緒にそれを食べるといい」
「えええ?そんな…いいです、俺…」
「子どもが遠慮することは無いぞ」
「いえ、その…料理はとっても嬉しいけれど、その…
たくさん持って帰ったら、お母さんが何て言うか…」
「なに、正直に言えばいい。人助けをして、その礼に料理を貰ったとな。
勇敢に闘って敵を倒し、その人を救ったとな。
ああ、だがお父さんの知り合いだったなんてことは言わない方がいいだろう。
変に勘繰られても困る」
「…ああ…分かりました。そう言います…」
「君はわしの命の恩人なのだからな!どんどん喰え。
どんどん食べて大きくなれ、神威君!
そして大きな夜兎になれ。お父さんを抜いちゃうくらいにな!」


鳳仙がにこにこと語る。
だが目の光が先程と違っていた。
自分を好奇な目で見ていたのではない事を悟った神威は、
同族である安心感も手伝って、どんどんこの鳳仙のおじさんが好きになって行った。
だってこの人…お父さんみたいな大きな優しさがあるんだもん…


「はい、ありがとうございます!」
「どうだ?訓練はしているのか?」
「はい。毎日、廃ビルの隅っこで…」
「ふむ。その傘は?」
「はい、もう2代目…くすっ。前のは妹にあげたの」
「そうか。頑張れよ、神威君。身体を鍛えるのを忘れてはいかん。
そしてお母さんや妹さんに優しくしてあげるのだぞ」
「分かりました!」
「そしたらお父さんも早く帰って来てくれるぞ」
「あ、は、はい!」
「そしてわしもまた、君と会えるだろう。その時を楽しみにしているよ。
その時は一緒に傘を合わせてみようじゃないか」
「あ、はいい!お願いします!俺、もっともっと強くなりたいんです!」
「…ふむ!」
得たりと鳳仙が目を細めた。


神威は包まれた大量の料理を抱えて帰って行った。
その後姿に、鳳仙は大きく頷いた。


「星海坊主よ…お前の息子に助けられたぞ…
わしはお前を倒そうとして闘ったというのになあ…
ははは、なんと因縁めいた出会いだったことか…ははは…」
声を立てて笑う。


お前の息子は大した夜兎だったぞ、おい…
知っているのか?星海坊主よ…
きっとあの子はお前よりも強くなるだろうな…ふふ…
なんと楽しみなことだろうなあ…



「はあ、はあ、鳳仙さま!ご無事でしたか!探しました!」
「こののろまめ…どこを探しておったのだ」
「は、はい、す、すみません!」
駆けつけた鳳仙の部下が、深々と頭を下げる。
人混みの中、途中で鳳仙を見失い、今の今まで上司を探し回ったのだろう、
顔は汗とほこりで汚れ、声も切れ切れである。

「本当に…ご無事で…良かったです!はあはあ…」
鳳仙はにやりと口元を緩めた。


「ご無事で」という所が気に入った。
ならば咎めはナシとしてやろうじゃないか…
おや、今日のわしは気が大きいな…
あの神威君のせいか?
だとしたらお前も、トマトの恩恵を受けているのだぞ…

「さあ、行こうか」
「はい、もう船の給油も済みましたし、食料も運び込みました。そろそろ出航の時間です」
「ふむ。トマトを買おう。八百屋へ行く」
「はあ?と、トマトですか?あの赤い?」
「ああ、そうだぞ、可笑しいか?」
「ええ…はっいえ!失礼しました。トマトを買われるんですね、承知しました!」
「ほら、八百屋へ寄るぞ、伴をしろ」
「あ、は、はい!」

歩き出した鳳仙の後を慌てて部下が追いかける。
「あ、あの…鳳仙さま…あ、あの何でトマトなど…その?」
「ああ、ああ、あはは。
今日この街の市場に立ったトマトは極上のものだったらしいぞ?
真っ赤で大きくて味も良いらしい。それを聞いて、トマトを食いたくなった…」
「はあ?それは誰に聞いたのでございますか?」
「…ああ…それは…この星に住む、ダイヤモンドの原石に、だ…」
「は、はああ?」

ああ、将来お前の上司になる奴かもしれんぞ?ふふ…

「おい!行き先変更だ。グランバルド星へ立ち寄ることにする。早速手配しろ!いいな!」
「ええ?あ、は、はいいいいい!早速に!」
部下は大慌てでケータイを開く。


トマト?
ダイヤモンドの原石?
グランバルド星?
どこに何の共通点が?…
気の毒に鳳仙の部下は頭の中が大混乱となって、整理がつかなくなってしまった…







<次回は阿伏兎登場の辺りになる予定です




★皆様へ

いつも「祈り」にご訪問頂きまして、どうもありがとうございます。
ただ今メイン連載中のこの「螺鈿」らでんは
5/4のSCCにおいて、発行される運びとなりました。
200Pにもなりまして…はあ…いつも長くてすみません(笑)


A5/200P/1500円/FC表紙/18禁

緋桜流のスペース番号
東4ホール か-23a
私がお誕生日なのでお誕生日席にしてもらえたらしいです(笑)




<ちょっとCM

「螺鈿」(らでん)

阿伏兎×神威
銀時×神威

A5/200P/1500円/FC表紙/18禁


「お前に生き残る術を教えてやろう」
少年神威は夜王鳳仙にその力を見出されて弟子入りする。
突出した才能と美貌を持ち合わせた神威は鳳仙の思惑通りにその力を発揮、
若くして春雨の幹部に抜擢される。
途中、宇宙の流れ者だった阿伏兎と出会うが
阿伏兎には哀しい過去が有った。
そして鳳仙の引退後、第七師団団長に就任。
父・星海坊主や病身の母親、神楽との生活を捨てる決心をする神威。
幼少神威~鳳仙と修行~阿伏兎との出会い~団長就任~吉原~後日談の流れで
神威のさまざまな過去、心境、星海坊主一家の暮らしぶりなどを描いています。
「華麗なる夜兎族」と「地球人の銀時」と…阿伏兎神威の激しい情事も有り。

09.5.4 SCCにて発行!




大変長いお話になりました。
まさに「華麗なる夜兎族」といった雰囲気!
神威のお母さんも出て来ます。
阿伏兎の知られざる過去、鳳仙の実力など
深く振り下げた作品となりました。
勿論阿伏兎と神威の激しい情事も…18禁です



♪緋桜流のサイト「フル・スロットル」
http://www.mizukijoe.sfcji.com

♪「螺鈿」「shine」「影を知る」「目覚めなければいい」のお知らせP
http://mizukijoe.sfcgi.com/kage-oshirase1.htm

明輝堂さまからも買えますが
自家通販もあります。
サイトの「発行物」へお越しなり、メールをお寄せ下さい。



それではまた!


城みづき



 
螺鈿 らでん その3  09.4.19



注>この話はその2と繋がっていません







油断した!
建物の影から現れた天人達に、脇に抱え持った傘をあっという間に引き抜かれてしまった。

「旦那あ~、いい着物着てやすね。金も持ってんだろ?
さっさとこちらへ出しな」
「…ふん。何を言う。わしを春雨幹部鳳仙と見知った上での犯行か?」
「鳳仙~?知らねえなあ、がはは!」
「へええ~、この傘もえれえ豪華な作りだぜ?こりゃあ高い金になりそうだなあ、いひひ」
「ああ、お前達が一生働いても買えないシロモノだからなあ、ふふふ」
「その着物も頂くか…じゃあ旦那、あの世へ行ってもらいやすぜ」
「何おおお~!」

鳳仙は天人達の遥か上空に飛び上がる。
だが天人達も四方八方に飛び散り、戦闘態勢を作った。
手に持った太い金属棒。
夜兎族鳳仙の何倍もあるその巨大な身体がぶんぶんと振り回した。
辺りに風が舞った。
だが鳳仙はそれをひらりと避けて着地し、身構えた。
すぐ後ろの天人に、身体を回転させて足蹴りを喰らわせる。
ぎゃっと声を上げて一人が倒れこんだその上を跨いで、道路の脇へ飛んだ。
天人数人がその後を追い、金属棒が投げられた。
それが鳳仙の足を直撃して転んでしまう。
きっと後を睨み上げると、その巨大な身体に圧し掛かられてしまった。
まずい!と思ったその瞬間に。
その巨大な天人の目の辺りに、真っ赤なトマトが飛んできてぶつかった。
顔がトマトの汁で真っ赤になる。

「ぎゃああ!目が!目がしみる!」
押さえ込まれていた力が緩む。
その隙に鳳仙は天人の身体の下から這い出て、次の天人にも鋭い手刀を見舞う。
「ぎいいいあああ~」

一丁上がり。
夜兎族の手技は、剣よりも強いのだ。
次の天人にも足蹴りを喰らわせる。
夜兎の足技はブルドーザー並みの力で相手を払う。
もう一匹もどどっと音を立てて倒れこんだ。
鳳仙はさて次も…と思った瞬間に、またも赤いトマトがそれは猛烈な勢いで飛んできた。
トマトはもうひとりの天人の顔に命中した。
「ぎゃあああ~っ痛ええええ~!」
またも目を抑えて倒れこむ。

いったい誰が?と振り返ると、
トマトよりも鮮やかな色の珊瑚色の髪をした少年が傘を横に薙いで、
倒れた天人のその身体を踏み切り台にして飛び上がった。



傘!この鋭い身のこなしは…!
夜兎!
鳳仙は目を疑った。
こんな所で、夜兎族に出会うとは!
それも少年!
それも立派な戦士だ!



飛び上がり着地した少年は先程の天人が落とした金属棒を拾いあげた。
「おじさん!」
勢い良くその重い金属棒を鳳仙に向かって投げた。
ぱしっ!とそれを受け取ると、鳳仙はくるりと腰を回転させて、
後から襲ってきた天人目がけて振り下ろした。
「ぎゃあああ~!」
と、血だらけになってひっくり返る。

あとひとり!
少年のすぐ後ろに天人が居た。
鳳仙はその天人目がけて走り出す。
だが少年は後の気配を察していて、天人の剣が届く前に傘を思いっきり振り上げた。
たちまち辺りのもの、天人、ゴミ、土管などが一斉に宙を舞った。
それは竜巻の如く、登り龍の如く、巨大な風の渦を螺旋状に作り上げて天空を目指す。
「ぎゃあああああああ~!」
5人の天人たちはその渦に巻き込まれて遥か彼方へ飛んで行った。
それを夜兎ふたりがにこやかに見上げている。
自分らが巻いた渦には巻き込まれないようにするための、夜兎族ならではの足技が有るのだ。
ほんのちょっと足の甲に力を入れて立つだけだ。
だから自分らは舞い上がることはない。
舞い上がるのはすべて「悪者だけ」だ。
天人が地上に落ちてくるのはまだまだ先のことなのだ。



「危なかったね。ダメじゃないおじさん。
傘はいつも側に置いておかなくちゃいけないってお母さんに習わなかったの?くすっ」
少年がこちらを見て笑いかけた。
なんと鮮やかなピンク色の髪だ。
それになんと深く青い瞳だ。


「はあ、はあ…習った…ぜ?あはは…
だがちょっと油断しちまって傘を取られてしまったんだ…
大丈夫だったか?坊主…血が出てるぜ…」
「大丈夫だよ、こんなの平気だもん。すぐ治るから」
神威が腕の傷をぺろりと舐めた。
「はあ、はあ…君も…夜兎か?」
「うん、おじさんも、でしょ?くすっ」

鳳仙が息を弾ませているというのに、少年はちっとも息が乱れていない。
にこやかに笑いかけてくる。
少年はつくつくと歩き出し、建物の脇に落ちていた鳳仙の傘を拾いあげた。

「はい、おじさん」
「…ああ…ありがとう…」
「あああ、トマトが…夕飯のおかずが台無しになっちゃったよ…どうしよう…ぐすん…」
神威はしゃがんで、地面に散ったトマトの赤い汁を残念そうになぞった。
「ああ、悪かったな坊主。それは君の夕飯だったのか」
「ううん…お母さんと妹の…これ、今日の大収穫だったんだ…
いい品だったんだよ…『本日の目玉商品』…」
「そうか…悪いことをしてしまったな…高いトマトか」
「うんそう…今日頑張ったご褒美にって、残り、貰ったんだ、2個
…ああ…食べさせてあげたかったなあ…」
「だが君がトマトを投げてくれたおかげで助かった…
感謝している。トマトをまた買ってやろう」
「ううん、もう市場が閉まっちゃった…次は木曜日にならないと買えないんだ…ぐすん…」
「…そうなのか…」
「ああ、今夜のおかずは何にしたらいいかなあ…」

あまりに意気消沈する神威が年相応に見える。
先程の、嵐のような闘いぶりを見せた少年には到底見えない。
ただの10歳ぐらいの小さな少年…
だがこの身体の何処に、あの高い戦闘能力を秘めているのか。
震えんばかりの闘志を剥き出しにして何人もの天人達に果敢に傘を振るったあの力!
間違いなく夜兎族の、鋭い動き!
鳳仙はこの少年がとてつもない力を持っていることを悟って、身体が震えるようだった。

こいつは、将来が楽しみだ!と。


「仕方がない…じゃあ、君に何かお礼をしよう…腹減ってないか?」
「ううん、さっき市場でまかない食べたの…だから…
ぐ~っ」
「…ははは。いくら食べても減るもんな。
この年頃じゃあ…さあ、一緒に来るといい。何かご馳走しよう。
一緒に何か食べような。わしも腹が減った……」
「ふふ、そうか。夜兎だもんねえ。くすっ」
「ああ、そうだぞ。わしは鳳仙。君は?」
「神威って言います」










<まだまだこの後に鳳仙と神威の楽しいお食事タイムが続きますよ>








 
螺鈿 らでん その2 09.4.11


注>前回の「その1」とは繋がっていません








神威はこの頃、よく一人遊びに出かけていた。
母と妹の昼寝の時間にこっそりと部屋を抜け出しては、近所にあるガラクタ捨て場によく行った。
そこには何がなんだか分からない部品やら木の棒やら金属くずなどがいっぱい落ちていた。
中にはブリキのような金属で出来ている変わったおもちゃのような物も有るので、
そういうガラクタを見つけるのが楽しみだった。


「うわ…これって宇宙船の形みたい…」
雨に濡れ、ゴミに混ざって落ちている汚い物なのだが、そんなことは関係ない。
神威はおもちゃをほとんど持っていなかったので、わくわくして探した。
そしてひとりでそれを使って遊んだ。
ひとりでも楽しかった。
だが持って帰ることは出来ない…母に見つかったら、ひとり歩きがばれてしまう。
母にはまだ知られたくない…だって心配かけてしまうもの…と思っていたのだ。


この星には、神威たちのような夜兎族も少々、また違う種類の天人たちも大勢住んでいた。
人間も天人も、皆貧乏で街も汚く、盗みや人殺し、強姦なども日常茶飯事。
浮浪者、やくざ者がたむろする裏通りは、最も危険だった。
宇宙船が港に到着する時刻になると乞食たちが一斉に押し寄せて強盗が多発する。
それを取り締まる警察のような組織も無い。
治安などという言葉と無縁の星。
そんな星の街中で、神威が人さらいに遭ったら大変だというのが母の心配だ。


だがやはり神威は夜兎族の子どもだった。
夜兎の男だった。
少しずつ、むくむくとその闘争心が湧いて出て来ていた。
じっとなどしていられない、その躍動する心と身体。
夜兎の血が神威の身体の奥深くから騒ぎ始めていた。


このガラクタの捨て場所は奥まったビルの間に有った。
人などほとんど寄り付かないのをいいことに、神威は「修行」と称した遊びを始める。

辺りを慎重に見渡す。
音もしないし人影は無い。
誰も見ていないことを確認して、傘を思いっきり振ってみる。
するとガラクタが一斉に渦を巻くように舞い上がり、近くのビルの窓を壊し、建物の壁にヒビが入った。
神威は身をかがめて飛び上がり、そのヒビを避けて片足で壁を蹴り、一瞬の後に階上へと着地する。
空中でひらりと回転する。
そうすれば猫のように、どんな姿勢で飛び上がっても、きちんと足から着地することが出来ることを覚えた。
傘の振り具合で、どの程度の力が出せるかも知った。
神威の周りに有ったガラクタは、更に粉々のガラクタになった。
「あれえ…ちょっと失敗…さっきの宇宙船がどっかへ行っちゃった…」
神威は哀しくなる。
まだまだ力加減が分からない。
せっかく見つけた大事なおもちゃだったのに…と泣けてきそうだった。
だが粉々になったガラクタを見て満足げに笑った。
「ふふ…簡単だ…こんなの…」



かつて神威は母の心配通りに人さらいに出会ったことがあった。
母の神名譲りの、それは見事なピンクの珊瑚色の長い髪、それを後ろにひとつのみつあみに編んでいる。
そして日を浴びないその透き通るように白い肌。
大きな濃い青色の瞳。
さくらんぼ色のまあるい唇。
その、まるで人形のように愛らしい姿形は、この危険なチンピラが蔓延る街には目立ち過ぎた。
ある日、いつものようにひとり遊びに出かけた帰り道、神威は小さな油断をしてしまう。

誰にも追いつかれないようにといつも通りを歩く時には駆け足で走り抜けるのだが、
その時は道端に落ちていた光るものに目が行った。
金貨?…
目に留めて一瞬立ち止まった所を、後からひょいと持ち上げられたのだ。
「あっ!」
と思った時には遅く、野卑な目をした天人に抱きかかえられていた。

その天人は巨大で、神威の3倍ぐらいの大きさがあった。
「おやああ、簡単だったな~。ほれ一丁上がりだ。
綺麗な子どもじゃないか。こりゃあ高く売れるってもんだ!」
「く、くそっ!は、放せえ!」
神威は足をばたばたと蹴るが、当然地に足が着かない。
「おっとお?男だったかこりゃあ。まあ、男でもいいか。
このナリならそういうのを欲しがる奴らが大金を出すってえもんだな。がはは~っ!」
「ヲイ、スゲえ綺麗な坊主だぜ、こりゃ!へへ!高い金になるぞ。やったな!うひひ」
笑いながら先程の金貨を拾う、もう一人の天人。

罠だったのだ。

「いやだああ~!放せ、この!この!」
「坊やあ~、こんなトコひとりでウロついてたら、さらって下さいって言ってるようなもんだろ?駄目だよお。
いっひっひっひ~」
「へへ、こういうもんが好きな奴にはたまらんでしょ、このナリ…がははっ!」

神威は慌てた。
大変だ!どっかへ売られちゃう!
お母さん!お父さん!た、助けて!
だが……僕は傘を手に持っている!

「ちくしょう~っ!放せえ!」
と叫ぶが早いが、神威は持っていた傘を思いっきり振った。
たちまち辺りの物が一斉に竜巻のように舞い上がる。
「うわああああ~っ!」

チンピラ天人ふたりも、その渦に巻き込まれて高く高く舞い上がる。
くるくると螺旋を描きながら、大量のゴミと一緒に飛ぶ。
神威も抱きかかえられたまま宙を飛んだが、慌てたチンピラ天人の腕の力が緩んだ一瞬の隙に、
その太い腕に噛みついてふりほどいた。
さっと身を翻して飛び、くるりと空中で一回転した。
そしてゴミが無くなりめっぽう綺麗になった路上にひらりと着地した。
上を仰ぐと、チンピラ天人たちはまだまだ遥か上空だった。
神威はにやりとひとつ笑うと、天人たちが落ちてくる前に、ささっとその場を走り去った。


「これが…夜兎の傘の、ちから…」

路地の隅に隠れて、神威は自分の傘と手をまじまじと見つめた。
ただ傘を一振りしただけなのに…
あんな大きな大人の天人をふたりもやっつけた…!
修行の成果があったんだ!
僕がひとりで倒したんだ!

神威は荒ぐ息の下、自分の傘、否、自分の力に驚く。

夜兎は強い!
僕は強いんだ!
もっともっと強くなれば、誰にも負けない。
誰にも負けたくない!
やられそうになったら、そうなる前にこっちから
やり返せばいいのだ。
そうしたら、自分が一番強くなれるんだ!

そうして神威の心の中の「強さ」への憧れが一層熱く燃え上がった。
それ以来、神威のひとり遊び=修行は、更に熱を帯びたものとなる。



「…お母さんが起きていないといいんだけど…」
またこっそりと足音を立てずに階段を昇り、部屋へ戻った神威はびっくりした。
目の前に巨大な男が、マントを羽織った男が立っている。
後姿で顔が見えない。


ええええ?た、大変だ!ぼ、僕の家に男が居る!
だ、誰?
さっと傘を後ろに引いた。
やっつけなければ!
と神威が傘を構えて振り上げた瞬間、その男の傘が簡単に神威の傘をその手から落とした。
からららんと傘が遠くへ転がっていく。
「あっ!」

振り向いた男は星海坊主だった。
父である。…たぶん…
男はパイロットキャップを被り、ゴーグルを額の上に乗せていた。
まるでアニメのアラレちゃんみたいだ…と神威は思った。

お、お父さん?
たぶんお父さんだろうけど…わ、分からない~~!

「おお神威か。大きくなったじゃないか!」
だがその声は聞き覚えのある、父、星海坊主だった!
「お、お父さん!……だよね?」
「ははは、お父さんだ。忘れちゃ困るぜ」
にやりと星海坊主が笑った。
そしてしゃがむと大きく手を広げてくれる。
そこに神威は飛び込んだ。

「お、お父さああ~ん!お帰りなさい~!」
「ああ、神威、ただいま」

神威は嬉しさのあまり涙がいっぱい出て来たが、なんだか照れ臭くなって、
父のマントでこっそりぬぐった。

「お、お父さん、お父さん…」
星海坊主は神威の頬を持ち、にこりと笑いかけてくれた。
「神威…大きくなったなあ…それにその傘は自分用に買ってもらったのか?
構えられて驚いたぜ。だがさすがは夜兎族の男だな。殺気を感じたぞ?」
「…だって、だって…お母さんと神楽を護らなきゃって思って…」
「は?神楽?ああ?」
「あ、あなた!」
声に気付いた神名が起きて来た。
「神名!」
父と母が抱き合った。
母が大泣きしている。
だがとても嬉しそうだった。
そんな母の顔を見たことがないと思うほどに。

「ああ…ああ、あなた…よくご無事で……」
「随分待たせてしまったな…手強いえいりあんと闘っていたら遅くなっちまって…
金は届いているか?」
「ええ…助かりました…そうでないと私たち3人、飢え死にしていたかも…」
「3人?」
「ああん、あああ~ん」
「あ、お母さん!神楽が泣いてるよ!」
さっと神威が母の部屋へ飛び込んだ。
「…?」
星海坊主もその後に続く。不思議そうな顔。
神名は笑っていた。

小さな赤ん坊が、ベッドの上で泣いている。
神威がその手を握っていた。
「おお、なんと…!」
「お父さん、妹の神楽だよ、かぐら!」
「半年ほど前に…生まれたの…11月3日生まれ…」
「ヲ、ヲイ…ま、まさかと思うが俺の子か?」
「当たり前でしょ!前に此処を出て行ったのが、そんなに前だったってことです!」
「おおお…それは素晴らしい!」
「はあ?何ですって?」
「いやいや、はは、はああ、ははああ~っ」
星海坊主は目を拭う。
「お父さんったら…泣いてるの?」
「ああ、泣いてるぞ。嬉しくってな!神威、お兄ちゃんになったんだな!」
「うん、お父さん!僕ね、お兄ちゃんになったんだよ!
お父さんが居なかった間に、ちゃあ~んとお母さんと妹を護っていたんだからね!」
「おおおお…それはますます以って素晴らしい!」
星海坊主が神楽を抱き上げた。
神楽は初めて見る胡散臭いキャップを被り大きなゴーグルを頭に載せた巨大な男に怯えて、
一層高い声で泣き始めた。
「ああああん、あああああ~ん」
「おお、神名!神名、どうしたらいいんだ?」
「…自業自得…人見知りが始まる時期なんですもの…
泣くに決まってるわ…そんな恐ろしげなカッコして…」
「お母さん、神楽が可哀相だよ…怖がってるよ?」
「いいの…放っておきましょう。さてお米をといで…
そうね、神威、卵を買ってきてくれない?4つね!」
「うわあ!はあい!行ってきます!」
「おお、神名、助けてくれ。どうしたら泣き止むんだ?
腹減ってるんじゃないのか?」
「違います。怖がっているのよ、あなたを」
「…お母さん…神楽に抱きグセついちゃうよ?いいの?
僕みたいになっちゃ大変だから、神楽を泣き止ませてよ」
「まあ、神威…」
神名は蕩けるような笑顔で微笑むと神威の手にお金を握らせ、その指を丁寧に折らせる。
「ええと…卵に牛乳も…それからトマトもね。神威の大好きなオムレツを作りましょうか」
「うわあああ~、ほんと?お母さん!」
「ええ、今日はお父さんが帰ってきたお祝いね」
「ああ、ああ、神名、泣き止まないぞ?助けてくれ!」
「もう…くすっ。分かりました」
「あ、お母さん!お父さん、手も洗っていないし、うがいもしていないよ?
いけないんだよね?外から帰ったらすぐにしないとね?」
「そうでしたね、神威。あなたは?」
「…あ、あれ?れれ?知ってたの?お母さん…」
「…さあ、早く行ってらっしゃい。頼むわね、神威」
「あ、はい…」

あれえ…バレてたのか?…いや、そんなはずは無い。
きっとカマをかけたんだと思う。
いや今日はバレてたのかもしれないなあ…
お母さんより先に、お父さんと話していたからね…



神威は元気よく大きな音を立てて外階段を走り下りた。







<次回は鳳仙が神威と初めて出会う場面の予定です>










 
螺鈿(らでん) その1 09.4.8






どんな向きで寝ていても、眠りに入ることが出来ない。

何だって言うんだ…
こんなことで眠れなくなるなんてな…
いや、当たり前か…
アイツと同じ名前であると言うだけで、
こんなにも心が騒ぐのは…
そうだ…当たり前だ…
死んだ女房と同じ名だ…かんな。


どこまで行ってもきっと同じ風景しか見られないだろう、遠く果てしなく続く黒い宇宙空間。
そこら中に散りばめられた宝石のような無数の星々。
だが何度も見ていれば飽きるというものだ。
そんな景色にうんざりするも、やはり外を眺めてしまう。
丸い窓を覗き込む。
次の星まであと一週間はかかると聞いていた。
…まだこの景色が続くのか…



どこまで行くのか?と聞かれて、当てもないと返事をしたが、快く乗せてもらった貨物船。
格安料金だったのが狙いだった。
だが大抵の仕事には大した報酬が付かないので、安いのに越したことはない。
荷物の間に寝転がれる空間が有りさえすれば、問題は無いと考えている。
それに程々の味の食事が振舞われるのなら尚のこと良い。
宇宙旅行用の豪華な客船よりも、こんな小さな貨物船の方がずっと落ち着ける。
性に合っている。
大体高い料金の客船に乗れるほどの金も無い。
だがどんなに姿勢を変えても眠気が襲ってこない。
むしろ目が冴える一方だ。


こんな船は慣れっこだったはずだがなあ…
どうにもこの船は乗り心地があまり良くない…いや、
俺の気分が良くないのが原因だ、この船のせいではない。

ため息をつきながら、また外を眺める。
吐く息で窓が白く曇った。



「旦那あ。ほれ…」
振り向くと手に小さなカップを持った乗組員が立っていた。
カップの中身は酒か?
その顔がにこにことしている。


「…おう…有り難いな。酒か?」
「そうだよ。地球産だ。美味いぞ」
「嬉しいねえ…地球は酒も飯も美味いからな」
カップを受け取ると匂いを嗅ぐ。
美味そうな匂いだった。
ちびりと一口…きりりとした喉越し。
だが後味が悪くない。ほんのりと甘く香る。
高い酒なんじゃないだろうか?

「おう、いいな。ちょうど寝酒が欲しかった所だ…気が利くな。別料金か?」
「いんや…俺の酒のお裾分けってえことで…へへ」
「馳走になる。ありがとよ」
「…旦那も地球へ行った帰りだろ?仕事か?」
「いや…仕事じゃねえ…野暮用さ…」
「そりゃ残念だ。てっきりコレと会って来たのか思ったんだがね」
乗組員がにやりと笑いながら小指を立てた。

「…昔の…ダチの墓参りってえトコだ…」
「こいつぁ悪いこと聞いちまったかな?…」
「いや…そんなこたねえ…なあに…ムカつく嫌な野郎だったんだがなあ…
死んじまうと…なあ…はは…」
「ふむ…なるほどね…」
「あ?」
「だから眠れなかったんだろ?
旦那…そいつとの楽しかった喧嘩とか若かった頃の事とか思い出したりして?
ふふ~」
「……当たりだ…はは…」
「…まあ、味わって下せえよ…そのダチへのはなむけってえコトで…はは…」
「…だなあ…喧嘩のカタも着かなかった野郎だったがねえ…」

片目をつぶってカップを上げる。
ぐびりと音を立ててもう一口飲んだ。
乗組員はにやりと笑った。

「そうなのかい……おっと、次の星はアトラス星だよ。五日後に到着だ。降りるか?」
一瞬考えて目を閉じたが…

「ああ、降りる。一仕事出来たようだ。この船はアトラスに戻ってくるか?」
「ああ戻るよ。マターリ星に荷を下ろしたらまたトンボ帰りだ。
たぶん三週間ぐらい先だが、なに、また乗るかい?」
「ああ、拾ってくれ。頼む」
「分かったぜ。じゃあな」
乗組員はにこりとひとつ笑うと行ってしまった。

まあ…俺が生きて戻れたら…の話だがよ…




もう一口酒をあおると懐から小さな封書を取り出す。
後ろには白いうさぎのシールが貼ってある。

差出人の名前は
「かんな  あとらすせいより」

子どもの書いた字だ。たどたどしさが愛らしい。
封筒はあちこちが破れんばかりに汚れている。
それをおもむろに開く。



「えいりあんばすたーのおじさんへ

わたしのくらしているほしは、あとらすせいですが、

いまあとらすせいにこわいえいりあんがいて、

おおくのひとがしんでしまいました。

わたしのおとうさんもおにいさんも、そのえいりあんを

たおすためにたたかいにいっていていません。

おかあさんがねたきりでさびしいです。

どうかこのえいりあんをたおしにきてください。

おねがいします。

おれいにわたしのうさぎのぬいぐるみをあげます。

あとらすせい     かんなより」





ふうとため息をつく。
なんだこりゃ…まるでウチのようじゃねえか…
デジャブかい?まったくよ…

えいりあんばすたーという仕事は、呼ばれれば何処へでも赴く。
たとえそれが辺境の星だったとしても、報酬がとてつもなく少額であったとしても。
金でなくて、食料だったり酒だったとしても。
それが自身の誇りでもあった。
俺に助けを求めている奴がこの宇宙にひとりでも居るのなら…と。
いつもそうしてきた…だが今回は胸の奥がチクリと痛んで、躊躇していた。
ガラでもねえ…とひとりごちる。


地球の江戸…
まさか地球で、あの鳳仙の墓参りをすることになるとは夢にも思わなかった。
あの鳳仙がろくな死に方をするはずがないと思っていたことは事実であったけれど。
しかし戦闘種族である夜兎族が「闘い」で死ねたことは、
なんと幸福なことか。
野郎はきっと満足だったに違いない。
笑って旅立って行けたことだろう…
「羨ましいこった…なあ…鳳仙よ…」

若き妾ひとりのために巨大な地下遊郭「吉原桃源郷」を建て、
春雨を引退し、地下に籠った野郎…鳳仙。
ふん…あれがそんな色めいた街を作るのも意外だが、
その街と女を護るために死んだなどという話は更に信じられなかった。
更にその闘いの相手が、娘の神楽を置いてきた「銀時」というあのいい加減な男だったと聞いてなお驚いた。
また更に、もう長いこと音信不通の息子、「神威」も参戦していたと聞き、耳を疑った。
急いで地球へ飛んだ。
だが鳳仙はもう墓の下、神威は地球を去った後だった。
神楽には会えなかった。いや敢えて会わなかった。
だが銀時には会えた。
相変わらずの覇気のない目をした白髪野郎…
だがあの鳳仙を倒した。
自分でさえ、勝負がつかなかったというのに。

だが野郎はあんなのは勝てたんじゃねえよ、ただの袋叩きだと答えやがった。
参戦した者たちはすべて瀕死の状態だったと言う。
ああ、あの鳳仙に勝てるわけがないさ、地球人に…と思ったが銀時には言わなかった。
だが銀時は確かにあの夜兎の猛者、鳳仙を倒した。
そして生き残った。
神威が狙う次のターゲットとして、人質にされて。

年中日がかんかんと降り注ぐ崖っぷちに建てられた墓に
言葉をかけて来た。

鳳仙…老いてもなお、血気盛んに闘ったか。
なに…そんなに女が大事だったか…
女と街を護るために傘を振るったか。
見えるようだな…その時のてめえが。
かつて俺に向けたあの目を今度はあの銀時に、神威に向けたか。
そりゃあ楽しかっただろうなあ…
……羨ましいぜ…
……ふん…ざまあみやがれ…




…しかしまあ…
こんな小さな一通の手紙が、
宇宙の片隅の俺の手元に届くなんてことの方が奇跡みてえなもんだ…
それも「かんな」だとよ…




…神名…
……俺はまたお前に会えるだろうか…

星海坊主はアトラス星に行くことを決めた。









<次回は、幼少神威の修行の場面の予定です>




このお話は完成後本として発行します。
5/4のSCCの予定です。
東4ホール か-23a  緋桜流












 
5/4のSCCに参加します。

スペース番号は 東4ホール 「か-23a」 緋桜流 
恥ずかしながらお誕生日席だ…汗だわ、どうしましょう…です!
でもせっかく頂きました嬉しい席です。

新刊「螺鈿」(らでん)
頑張りたいと思います!


ただ今、快調に制作中(笑)です。
思ったよりもずっと長いものになりました。
200P超えになる模様…


今回の「螺鈿」のテーマは、
神威の幼少時代~鳳仙と修行~団長就任~吉原~後日談的に銀時と遭遇
です。


神威の幼少時代を書こうとすると
どうしても星海坊主と、その奥さん、鳳仙、若い阿伏兎らが出てきますね。
一番困ったのが神威のお母さん、星海坊主の奥さんなワケですよ。
ま~ったく本誌に出て来ていないのでどうしたらいいか…
でも星海坊主はえいりあんばすたーとしてご活躍中、小さい神威は「お母さんと一緒」です。
まあ、5月に出るキャラブックに過去がどう載るか心配なのですが
現在は仕方がないので、思いっきりねつ造キャラですよ…
でも強くて素敵な女性でなくちゃ!と頑張ってます。

あの星海坊主が若くてさ、髪ふさふさで、このお母さんとラブラブなものだから
書いていて恥ずかしいったら!
でも幼少神威にも多大な影響を与えた人として、心して書かせて頂いております。
でも死んじゃうのが…(泣)

阿伏兎の過去も考えてみました。
若い阿伏兎にも私はすっかりご執心!
非常にカッコ良く書いちゃった…♪
まだ団長就任前の神威と出会うシーンはもう、迫力満点に書きました!
でもあぶさんったら…もう…なのです、お楽しみに。

そして鳳仙だ!
この男の偉大さにも恐れ入る…
そういう書き方にいたしました。
阿伏兎、神威を春雨に引き入れたんですからね…
もちろん、少年神威を修行させている様子も書きました。
萌えました!

そして吉原。
そして吉原後の、銀時と神威…

美しい螺鈿細工の柄の傘…
それが星海坊主一家の運命、吉原の運命を大きく変えた…
輝かしい夜兎族!




今後、少しだけ試し読み出来るようにUPする予定です。



なんだか公式で「銀時×月詠」がああ?
なんと可愛らしくていいんでしょうね、月詠!
また銀時もかっこ良くて、きえええ~てな勢いでWJを読んでいます。
アニ銀も無事に4年目開始。
私はますます銀魂三昧です!


では5/4のSCCで!
「目覚めなければいい」 第3版の予定。
「影を知る」 在庫全部持って行きます。
「shine」 足りるかな?
「螺鈿」 ぜひ間に合わせたいと思います。
間に合わなかったら夏コミ…落ちなければ(泣)



拍手やメール、通販のお問い合わせなど、本当にありがとうございます!
とても励みになっております。

「明輝堂」さまにて委託販売中です。
イベント売りよりも少々割高になりますが
どうぞ明輝堂さまの方でも、よろしくお願い致します。


緋桜流  城みづき




 

 

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