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目覚めなければいい  その8 08.11.28


さっと抱きかかえられて布団に転がされた。
背中から覆いかぶさる様に抱きすくめられる。
すぐさま帯を解かれて胸をいじられた。
胸の飾りを痛いほど摘む。
なぶるように強引に。

「や…痛…くっ…」
同時に首筋にも息をかけられ、熱い舌が這う。
「…っ…あ…ああっ」
「反応いいじゃない?やっぱりこういうお仕事してるからかなあ?今まで何人とヤッたのかなあ?」
「くうっ…ひ、秘密…」
「うほ!そうかそうか。くすっ」
「チクショウ、てめ…」
「君、面白いなあ…前はどう?」
「あっ」

(中略)

朦朧とする意識の中で、神威が言った「力の弱いやつ」という言葉が何度も脳裏で繰り返された。



俺は…弱いやつなんかじゃない…
決して違う…
いつかきっと力を持って、立ち上がってみせる…
みんなを護れる力を蓄えてやるんだ…!
先生に言われたのだもの…
『みんなを護りなさい銀時』って…

…今夜は俺が来て良かった…
こんなやつと寝かせないで良かった…
ヅラ…晋…

汗なのか涙なのか分からない、濡れた頬。
額にべっとりと貼りついた白い髪をそっと剥がされる。
その額に小さくキスされて銀時は目を覚ました。
神威がにこにこと覗き込んでいる。

「大丈夫?銀時くん…ちょっと無理させちゃったかなあ?くすっ」
銀時は答えようとしたが、喉に力が入らない。
足も腰も力が入らない。
やっと首だけ動かして神威の方を見る。

「ふふ…生きてて良かった」
「…こ…この…ヤロウ…」
「ふふ~。ほんと面白いね、君。俺ね、君が気にいっちゃった。
その生意気な感じ、そそられるなあ~」
「な、なんだ…とお…」
銀時は威嚇するように神威を睨んだ。
「ひゃはは、ほんと面白いねえ。いい買い物しちゃったなあ、俺。
また来るからさ、その時まで元気で居なよ。変な客に殺されたりしないでね?で、
いっぱい修業してさ、上手い陰間になってよ。楽しみにしてるからさ」

神威は銀時の両腕の戒めを解いた。
掛け布団もそっとかけてくれる。
ささっと服を着ると、もう一度銀時の方を振り返った。

「お代、いっぱい払って行くから…それで何か食べる物でも買ったら?
お菓子とか、それともおもちゃとか?ね?くすっ」
「…死んじまいな、ボケ野郎…」
「きゃはは!まったね~」

神威は手を振りながら部屋から出て行った。
襖が閉まるのを見て、ようやく銀時は息をつく。


本当に殺されるかと思った…
アイツ、何者だ?まだ若いのに?…

「面白かったです。ではさようなら。また来ます」

お登勢に過分な代金を握らせて、神威はにこにこと去って行った。
お登勢は返す言葉も無い。
得体のしれないこの若者の背中に、警戒の視線を送ることぐらいしか出来なかった。

…銀時は…大丈夫だったのだろうか…


「さあて…とお、いい子見つけちゃったなあ…
これってやっぱり誰にも言わないで俺だけの秘密にしておいた方がいいよね」
神威は鼻歌まじりに通りを歩く。
「だって誰にも取られたくないもん…違法の陰間だっていいじゃない…」

そこに野良犬が一匹、神威にしっぽを降りながら近づいて来た。
何か食べ物でも…と思ったのだろう。
が、神威は傘をぶんと振り下ろす。
一瞬の内にその犬が切り捨てられた。
道路に散る血しぶき。
群衆から上がる悲鳴。

「ほらほらあ…強いものに迂闊に近づくと怪我しちゃうよ。死んじゃうよ。
弱いものはね、自分から近付いちゃダメなんだよ~しっぽ振ってるだけが許されるんだ」
さっと傘を振って血を払う。
「ああ、汚れちゃったなあ…」




襖が開いて静かに京次郎が入ってきたが、銀時は身体を起こすことが出来ないでいた。
「…大丈夫…でしたか?」
「…痛…い…」
京次郎は持ってきた洗面器のお湯でタオルを固く絞る。
そしてそっと銀時の身体を抱き起こしてやる。
「ねえ……ヅラ…は?」
「小太さんなら、薬を飲んで静かに寝ておりやすよ…」
「そう…良かった…」
銀時が心底安堵した声で答えた。
目は開けられないでいたけれど…

京次郎は銀時のあちらこちらに付いた傷に眉を寄せる。
特に両手首に付いた戒めの痕は、はっきりと紅く、痛々しかった。
温かいタオルでそっとぬぐってやる。
次に太ももの辺り、腹の辺り…尻に付いた血痕も拭く。
血はぬぐってもぬぐっても、あちらこちらに付いていた。
菊座も腫れあがり、血のりがべったりとこびりついている。
丁寧に拭き取り、軟膏を塗ってやる。

こんなにしなくても…と京次郎は心の中でつぶやく。
まるでそれを察したかのように銀時が返した。
「平気だ…こんなの…」
「……へい…」

京次郎は黙々と銀時の身体を濡れたタオルで清めると、新しい寝間着を着せてやった。
「ゆっくりとお休みなせえやし……」
ふらふらと立ちあがる銀時に丁寧に言葉をかける。
「うん…」


敷布にもたくさんの血の跡が有った。
そして大量の汗と精液…きっと涙も。

京次郎は汚れた敷布を剥がすと、洗面器と共に抱えて部屋を出た。




銀時が部屋に戻ると小太郎はぐっすりと眠っているようだった。
額の手ぬぐいを絞ってやる。
そっと額に手ぬぐいを置くと小太郎が静かに目を開けた。

「…ごめん…銀時…俺が行く予定だったのに…」
「いんや…いいよ。俺で良かったよ、昨夜は…」
「………ひどいこと、された?…」
「ううん…大丈夫…熱、少し引いたのかな?」
「ちょっと楽になった…」
小太郎が微笑んだので、銀時も微笑み返す。
「そか、良かった…俺も寝よう…起きたらアイス、一緒に食おうぜ?…」
「そうだな…楽しみだ…」

急に背中に重みを感じて銀時が振り返ると、晋助が抱きついてきていた。
「…アイス、ありがとな…晋…」

肩に回された手を握り締める。
晋助は黙って銀時の背にぐしゅぐしゅと顔を押し付けてくる。

……泣いているの?晋助…
と銀時は思ったが、それ以上振り返りもせずに、
晋助の手を握ったまま自分も布団に横たわることにした。














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目覚めなければいい その7 08.11.14


わずかに漏れ聞こえる三味線の音。
吉原桃源郷の奥、長屋のような建物が並ぶ路地裏。
この辺りは風俗の店ではなく、ここで暮らす人間の住居が続き、
表通りのような賑やかさは無い。
そこに三味線の稽古場が有った。


「つつつん…そういう感じがいいでござる」
「はい、師匠」
指導しているのはここ吉原で多くの芸妓の三味線の指南に当たっている河上万斉、
生徒は晋助だ。
晋助は週に2度ほど、この稽古場にやってくる。
日輪の居る遊郭で大規模な催しが行われた時、銀時や小太郎、晋助も招かれた。
料理がたくさん出るので腹いっぱい食えるぜと晴太に言われてのこのこ付いて行ったのだ。
そこで遊女たちとはまた違う、こういう場で働く芸妓たちの歌や踊り、
箏曲などを初めて目にすることとなる。
その優雅で美しい踊りや音楽にいっぺんで魅了された晋助だ。
その宴を盛り上げる男衆のひとり、三味線を巧みに操り典雅な音を奏でる万斉に、
晋助の目は釘付けだった。

あんな音、初めて聞いた…
あれはなんという楽器なのだろう…
あれを弾いてみたい…!

「お願いです。三味線を習いに行かせてください!」
「はあ?晋助、お前が、かい?」
「はい!今まで以上にお手伝いに励みます。どうか、どうかお願いします!」
晋助の真っ直ぐな視線に気合を感じたお登勢はそれを許した。
「じゃあ私ので良ければ…ちょっと古いけどねえ」
お登勢から三味線を譲り受けた晋助は、夢中になって練習に励んでいる。

うまくなりたい…
万斉のような音を出したい…
万斉のような仕事に就けたらいいのに…
と晋助は本気で考えていた。
ここでの色子としての命は短い。
声変わりが来てしまっては、その商品価値が格段に下がる。
その時期はもう目の前だ。
高い声が出にくくなってきているのだ。
その時が来る前に、ここで暮していく為には何か技術を身につけなくては…と考えていたのだ。
「つつつん…さてここで間を取って…そう、そうでござる。晋助はなかなか筋が良いでござるな」
「そう、そうですか!うわあ」

晋助は嬉しかった。
剣術でも学問でも小太郎に敵わず、あのふらふらした銀時にも剣術で勝ったことは無かった。
吉田先生の塾で、何一つ彼らに敵うものを持てなかった晋助は、
万斉に三味線の筋を褒められたことに舞い上がった。
ますます練習に熱が入る晋助だった。

「では次回は木曜日でござる。それまでに今日の所をきちんとさらっておくように」
「はい。ありがとうございました」
ペコリと頭を下げる晋助の後ろには、迎えにきた京次郎が立っていた。
無言で頭を下げる。
「さあ、戻りましょう、晋さん」
「うん!」
「それでは…」
帰り際に振り向いた京次郎は万斉に鋭い視線を送る。
「おやおや…見抜かれているようでござるなあ…アイツ、
只者では無さそうでござる…くくくっ…」



「ねえ、京次郎。俺ね、上手いって言われたよ!筋がいいって言われたよ~」
「それはよござんした!晋さんはいつも一生懸命練習していますからね、
成果が出たというもんでござんすよ」
「そか!いっぱい練習したら、もっともっ上手になるかなあ?」
「ええ、必ず…きちんと努力したものは、必ず身に付くように出来ているんで」
「うん、分かった」

晋助がきらきらとした目で語るのを、京次郎は頼もしく見つめる。
握りしめた手をぶんぶんと振り回す晋助。
子供らしい、明るい未来へのまなざしが痛いほどだ。
「京次郎、ねえ、あそこでアイス買って」
「へい。それでは銀時や小太さんにも買って行きましょう」
「やった!」

手を振りほどいて先に走って行く晋助を、京次郎が目を細めて見つめていた。


アイスを土産に寺田屋に戻った晋助は、その慌ただしさに呆然とした。
何やら小太郎が叫んでいる。


「いやだあ~、あ、京次郎!急いで俺の着物、着せてくれ」
「…何?どうしたの?ヅラ?」
「熱が有るっていうのに部屋へ上がるって聞かないのさ」
「平気だとさっきから言っているではないか。
お客人をこれ以上待たせる訳にいかないであろう?お登勢さま」
「だから…今日はおよし。ちゃんと寝て、熱を下げてからでないと…」
「何なんです?女将さん…」
「ああ、京次郎。先ほどから待っている客が居るんだよ。
髪の長い子がいいって言う…で、小太郎にと思って来たらば熱が有るっていうじゃないか。
なのに小太郎が行くと言って聞かないんだよ」
「ああ…それならば小太さん、女将さんの言うことを聞かなくてはなりませんよ。
今日の所はおとなしく寝て、熱を下げて…」
「う、うるさい!京次郎!さっさと着物を着せろと言っている!ごほんごほん」
「ほれ見たことか。小太郎、今日は休んでいな!」
「平気…だと言っているのに…ごほんごほん、ええん」

小太郎が京次郎に抱きついて泣き出した。
何度も何度も咳きこんでいる。
その背を撫でながら京次郎は困惑した。
「小太さん…」
「ええん、ええん…ごほんごほん」



「なら俺が行ってくる」
「え?銀と…」
先程から無言でじっと様子を伺っていた銀時が、部屋を飛び出して行った。
誰も止めることが出来ない勢いだった。
皆、唖然としている。
「あれ行っちまったよ…どうする気だろうねえ?
白髪に短髪、ああ、文句言われるだろうに…」
「化粧もしてません…それに着物も…」
「銀時…アイス溶けるよ…」
「お登勢さま、今夜のおかずは何にしましょう?」
「……」
「ええん、ええん~ごほんごほん」
「さて小太さん、お薬を用意しますから、それを飲んだら寝ましょうね…
大丈夫、すぐ良くなりますよ…
起きたらアイスがありますからね…」

京次郎に促されて、小太郎は泣きながらようやく頷いた。 
皆、心配そうに小太郎を見やる。
そして銀時が走って行った部屋へ、その視線を流した。




「お待たせしましたあ!今日は俺が相手する!この白い足見て勃たせやがれコノヤロー!」
勢いよく襖を開けて銀時が飛び込んで行った。
着物の前をまくってその足を露わにする。
「あれえ?」
「あれ…?お客人…でっか…?」
出されたお銚子を手酌で傾けていたのは、まだはたち前ぐらいの髪をみつあみにした青年だった。
驚く様子も見せずに、にこにことしている。
「あのさ、俺さ、髪の長い子をリクエストしたんだけど?なんで君?」
「ああ…あの、の、髪の長いのは今日は休みなんで、俺が来たの」
「あれえ?女将はそんなこと言わなかったけどな~?」
「急に熱が出たの、だから休み。今日は俺が当番」
「くすっ、当番」
「うるせえや。いいだろ?俺でも。ヅラよりずっと白くてイイぜ?保証する…」

と言いながら銀時はその客の肌色に驚く。
負けず劣らず色の白い青年で、ピンク色に近い薄い茶髪を後ろでひとつのみつあみにまとめていた。
若いし見栄えもそこそこに良く、こんな見世に来るようにはとても思えない。
銀時は威勢良く来たのはいいが、この妙に落ち着き払った笑顔の青年に戸惑う。
どうしよ…

青年がすっとにじり寄って来た。
「色が白いなら俺の方も負けないなあ…ほらどう?」
青年は服の袖をまくり、露わにした銀時の太ももに並べてみせる。
「ほらあ、おんなじぐらいじゃないかなあ?けらけら」
と笑う。銀時はむかついた。
「で、でも…あっ!」
銀時はその青年にあっという間に組み伏せられた。
「でもさ、力は俺の方が強いよ…ほら動けない…」
青年はにやりとほくそ笑む。
「ち…ちくしょ…」
両腕を押さえ込まれ身動きが出来ない。
「名前…なんて言うの?」
「ぎ…銀…時…」
「ふうん、銀時か。威勢がいいなあ。ま、いいかな、君でもさ。
綺麗だもん、君の白い髪、赤い瞳…」
またにやりと笑う。
銀時はこの笑みが得体のしれない、恐ろしいものに感じる。
変に怒らせると怖い人なのかもしれない?…

「じゃあさ…君の肌がどんなに白いか、見せてもらおうかなあ?ね?銀時くん?くすっ。
俺は神威。よろしくね」









 

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