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銀時×月詠 「whisper」その1




「おおいい~、お月ちゃあああ~ん」

ああ…あの声は…また来たのか…
よくもまあ、諦めずに毎回…ふん…
確か前に来た時には、ああ暑いなあと思ったから
夏だったか…
もう秋だ。
まるで暦通りに、ちゃんと季節ごとに来るんだからな…


知った男の声だったが、月世(つきよ)は無視した。
聞こえていないふりをして畑仕事を続ける。
…だってあの男は……

「何だいい~、ツレないなあ…聞こえてるんだろうよ。旦那は居るかい?」

仕方が無いな…という顔を隠しもせずに、月世は
「居るよ」
とだけ返事をした。
男はまた、
「お月ちゃんにもお土産が有るよ。じゃあ後でな」

何やらご機嫌な声で答えた。
こちらは嫌々答えたというのに。
そんなことなどお構いなしに笑顔の男。
ふん…よく飽きもせずに来るものだ。
おとうは断ったろ?
この顔の傷だって見て知ってるだろ?
あたいは売り物になんかならないよ!



季節の変わり目にやって来る男は女衒だ。
長谷川と言う。
黒いサングラスを掛けた長身の男。
月世を買いたくてやって来るのだ。
長谷川は日本中、あちらこちらでこれはという女子を見つけに歩いていて、そうして江戸の遊郭へ売る。
月世の住むこんな田舎にまで足を運び、月世を大層気に入って、ぜひに!と言った。
だが月世の父親はそれを断った。
確か8歳だったはずだ。
あれから6年が経ったというのに、長谷川は諦めず、季節の変わり目ごとにやって来ては一晩泊って行く。
今では月世の父親と飲むのを楽しみに来ている様子さえ見える。父親の方も、
「嫌な野郎だ。月世、決して甘い顔をするな。
遠くから来て酒を持って来てくれるから泊めてやるのだからな。
それに気を付けろ。油断するでないぞ!」
と言いつつも、田舎暮らしの父親は、長谷川が持って来る酒やら食べ物やらを楽しみにしている節がある。
時には月世に着るものやら小間物やらを土産に持って来る。
そして江戸の街の情勢やらあちらこちら歩き回って仕入れた面白い話などを肴に飲むのを、
父親がどこか楽しみに待っている様子なのが月世には気に入らないのだ。
…あの話は断ったはずなのに…
何故にこう長谷川は来るのだ?


それに帰る時には必ず取って付けたように
「お月ちゃん、いつでも江戸へ出ておいで」と言う。
要するに諦めていないのだ。




月世の父親は身体が悪かった。
月世の母親は月世を生むと間もなく亡くなったと言う。
月世は母親の記憶がまったく無かった。
ずっと父娘ふたりだけでこの土地で生きて来た。
小さな畑で作物を収穫し、川や野で採った魚や木の実などで、
どうにかふたり分の糧を得ることが出来ていた。
そうして月世が8歳になった時、この長谷川が現れて、
父親に「ぜひ吉原へ」と持ち掛けたのだ。

「これ程の別嬪な娘さんをこんな田舎で埋もれさせてしまうのは大変惜しいぞ。高く買ってやる。
そうしたら旦那だって金が入って楽になるだろう?どうだ?」
「断る。月世は俺の元で成人させる。それまでは俺は死なねえ!帰ってくんな!」

こんな会話が有ったのに、それから季節が変わるごとにやって来ては、父親と酒を飲む。
そして最後にはまた勧誘する。断る。これの繰り返し。
月世はうんざりしているのだが、病身の父親が長谷川と酒を飲むのを楽しみにしているふうがあるので、
それを許してしまうのだ。
実際、長谷川が来るようになってから父親は嬉しそうだ。
長谷川の持って来る話をとても興味深く聞いていては笑っている。
酒もなかなか手に入らないような貧乏な田舎暮らしでは、それも仕方の無いことだと分かる。
でもこいつは女衒だ。
「目的」が有ってやって来るというのに…
月世はいつも長谷川の訪問にいらついていた。


ある時、父親と長谷川が討論になった。
いつものごとく月世を買いたいという話だった。
列火の如く怒る父親に、その時の長谷川は食い下がっていた。
ふたりともそれは激昂していた。
そこに月世は飛び出して行った。
「長谷川さん!見てるといい!」

月世は手に持った小刀で、その白い頬にざくりと斬り付けた。
あっという間の出来事だった。
ふたりの男はあっけに取られてそれを見ていた。
「これであたいは売り物にならない!
さあ、長谷川さん、もう帰っておくれ!そして二度と来ないで!
あたいは江戸になんかに行かないよ!」

滴り落ちる赤い血。
大きな刀傷。
それはその名の通りに白く丸い頬に赤々と付いていた。

「お、お、お月ちゃん!な、なんてえことを…旦那!」
「お、おお!月世!」
慌てふためく父親は手拭いで月世の頬を覆った。
「おお、月世…分かったから…な!ああ月世、お前を売ろうなんて考えないから…
ああ、もうこんなことはするな!」
「…お…お…とう…うう…うう…」
泣き崩れるふたりを見かねて、長谷川は家を出て行った。



もうこれであたいは売り物にならない。
もう長谷川は来ないだろう。
…そう思っていたのに…
次の季節が来ると、また長谷川はやって来た。



「お月ちゃん、今日はね、美味しいお菓子を持って来た。
旦那と一緒に食べるといいよ。おう、ほれ酒も有るんだ。旦那は…居るかい?」
口ごもりながら、少々困った笑顔を浮かべていた。
「……!」
月世はぷいっと無視する。だが長谷川は
「おう、旦那…身体の調子はどうだい?いい漢方薬が手に入ってね…
旦那に持って来たよ…いつもの酒も…ある…上がっていいかな?…」

父親も月世も、薬を持って来たという所に折れてしまった。
実際、月世の父親はまったく薬を飲んでいなかったのだ。

労咳(今でいう結核)だった。
滋養のある食べ物と安静と…治療法はこれだけだ。
だがこんな田舎ではただ寝ているだけしか方法は無い。
迫り来る最期の時までこのままだった…

その長谷川の持って来る漢方薬が効いたかどうかは分からない。
長谷川がここを訪れるようになってもう6年目。
月世の父親はこの頃すっかりと衰え、ひとりで起き上がるのも大儀になっていた。
食事も排泄も今や月世の手助けが無いとままならない。
朝夕に高くなる熱、大量の汗、出始めると止まらない咳、少しになってしまった食事量…そして喀血。
だが月世の前で父親は、いつも気丈に
「今日は具合が悪いだけだ…心配するな」と言った。

…だが月世には分かっていた。
父親の寿命がもうあとわずかであることを。
気丈な言葉を吐きつつも、もう身体は完全に病魔に侵されている。けれど何も出来ない。
高価な薬を買う金も医者に診せる金も無い、つても無い。
今や長谷川が持って来る漢方薬のみが頼り…
だがこの長谷川が来る目的が……なので、
月世は微笑むことが出来ないのだった。







whisperの出だし部分です。
月世=つきよという名前は
吉原へ売られてくる前の月詠の名前です。




幼い頃に白夜叉に救われた月詠は吉原へ売られてきて太夫になった。
江戸へ出て来た白夜叉は銀時という名に戻り、用心棒として月詠と再会した。
禁断の恋は激しく燃えるが哀しい運命が待っていて…冬コミ新刊18禁。


お話を彩る名脇役として
長谷川、お登勢、京次郎、たま、服部、さっちゃん、乙姫、お岩、松平、沖田

涙なしで読めない内容…
銀月好きなら太鼓判
いつにも増して激しい情事あり。


whisper
銀時×月詠
A5/92P/800円/18禁小説/送料300円


冬コミ 東1ホール D-23b 緋桜流


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冬コミ新刊

「whisper」
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お待ちしております~~★




次回はこの続きか
もう一冊の新刊、阿伏兎神威「絶対命令」の予定です。








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