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このお話はその3と繋がっていません。
高杉が黒夜叉に目を斬られた後の、情事の初めの部分より引用。18禁。



悔しさで気がおかしくなりそうだったが、すぐ目の前にはまだ残っている天人戦士が居る。
戦意を向ける方向を変えねばならぬ。
銀時はその攻撃を片手で防ぐ。はじき飛ばす。
高杉を護るために、もう一方の腕は残しておかねばならない。
そこにまっすぐに坂本や桂が駆けつけてくれた。
大勢の天人戦士たちが次々に桂や坂本に襲い掛かるが、大いに奮戦していた。
たくましい仲間たち!

銀時はその闘いの流れの中に晋助を置いておくことは出来ないと判断した。
急いで降りねばならない。
そうでないとまた闘いに巻き込まれてしまう。早く血を止めなければ!
膝を折る晋助の身体を抱えた。
晋助の顔色は真っ青だった。
「大丈夫か?晋助っ!しんすけええっ!」
「はあ、はあ…ぎ、銀…」
「晋助!晋助っ!支えてやるから歩け!ヅラああ、俺は晋助を連れてくぜっ!」
「よし、頼んだ銀時っ。だが俺はヅラじゃない、桂だああっ」
「…へん、こんな時まで…馬鹿みてえ…」


銀時は晋助の身体を支えながら、慎重に、だが急いで建物の屋根を降り、遠くに見える森を目指す。
あの辺りまで逃げられればどうにか晋助を横たえてやれるだろう。
血に汚れた傷を洗ってやれる川もあるかもしれない。急げ!

銀時は気を失いかけている晋助の身を支えながら、追っ手が来ぬか?と
後ろに気を配ることも忘れなかった。
幸い坂本や桂の奮戦のおかげか、自分らを追って来る影は見えない。
だが次第に力が抜けて重くなって行く晋助の身体。
「晋助っ!しっかりしろっ!もう少しだ!」
「…………っ……っ…」

銀時は晋助を抱えて森の中へと潜む。
奥深く進んだ。
太い大樹の根元へ晋助の身体をそっと降ろしてやった。
そして前後左右を見渡した。真っ暗で何も見えないが、追っ手は来ていないらしい。
空気は静かで、虫の声しかしない。

「はあっはあっ…大丈夫そうだ…追っ手は見えねえ…おい、
晋助、大丈夫か?」
「はあ…はあ…あっ…はあ…」
「しっかりしろ!大丈夫だ。傷は目のあたりだけだな?
よし、ちょっと待ってろ。川か池かが有るかもしれないから。
動くなよ?」
銀時はざっと辺りを見回し、水の音がしないか?と耳を澄ます。
小さきせせらぎの音。
銀時は音のする方向へと足を進める。
あまりに暗いので、足元に気をつけなくては進めない。
足場をいちいち確認しながらその水音を追った。
幸運にも細いが流れの速い小さな川が有った。
銀時は自身のさらし帯を解くと、その川の水を浸す。
丁寧に洗う。
そしてきつく絞って振ると、急いで晋助の元へ戻った。

「手をどけろ晋助。拭いてやるから…そら…」
「……っ」
「晋助…大丈夫だから…俺しか居ねえからよ、泣き叫んでも構わねえ…さ…」
晋助は震える手をやっとその患部から外した。
傷口からの血は大分収まって来たらしく、新しい血よりもそろそろ固まり始めた血痕が
あちらこちらにこびり付いていた。
多くの出血があったことで、バイ菌は流れてしまっていることを祈りたい。
だが額から左目にかけて、更に頬の上部まで斜めにざくりと延びた長い刀傷。ひどい有様だった。
これはおそらく目の中にまで傷が付いたことだろう。
予想以上に大きな傷に、銀時は眉をひそめた。
だがその衝撃を声には出さずに、いくぶん幼子に語りかけるような調子をこめて、
晋助の前髪を避ける。

「…ほら…痛くねえか…」
銀時は丁寧に、だが力を入れて血の塊を落としながら、晋助の頬をぬぐう。
さらし帯はたちまち真っ赤に染まる。
「…あ…」
「…よし…待ってろ…もう一回水で洗って来るからよ…」
銀時は自分と晋助の水筒を持つ。
「喉乾いたろ…水筒に水入れて来るわ…ここを動くなよ」
再び銀時は先程の獣水の場所まで走った。
(獣水=けものみず。野や山に暮らす小動物の水飲み場。
大きくて深い川には小動物は近寄れないのでこう呼ばれる)
水筒に水を入れ、さらし帯を揉みだすと、急いで戻った。

「ほら…もう一回拭くぞ…ちょうどいい所に獣水があったんだ…良かったよ…ほれ…」
銀時はそっと傷の辺りを拭いた。そして額や反対側の頬も拭く。
じっとりと脂汗の滲んだ顔には、きっと冷たくていい刺激になっているだろうと思いながら…

「…あ…あ…ぎ…ぎんとき…か……」
「そうだ。俺だ…痛むか?…痛えトコはここだけか?…」
「…ああ……」
「そうか…大丈夫だ…左目あたりの傷は、大分血が止まってきたぞ…」
「……熱い……燃える…ようだ…」
「…うん…もっと冷やすか?…」
「…ああ…」
銀時は自分の水筒からさらしへ水をかけ、強く絞って晋助の患部へ当てた。
「…少し…冷やしてから包帯を巻くか…」
銀時は晋助のさらし帯を解く。
幸運にもさらし帯は汚れていない。
これなら大丈夫そうだ、充分に包帯として使える。

「……お、俺は………かたき討ちが…出来なかった…う……」
「ああ…俺もだ…すげえ力だったよ…ありゃあ、俺たちだけじゃ無理だったろうな…」
「…ち…ちくしょう…う…」
「晋助…仕方がねえよ…あれじゃ…あの場では、誰が向かって行っても駄目だったろうさ…」
「…せっかく……見つけた…というのに…くそ…う…」
「…そう…だな…だが…俺は……お前が助かって…良かったと思ってる…」
「…馬鹿銀時……俺のことなんかより…あいつを倒してくれれば…良かったのに…」
「…いや…無理だったろう…晋助…あいつ、相当だぞ?…」
「…悔しいな…あ…ずっと…この日を待っていた…と…いうのに……
俺は…先生の…かたき討ちが…したかった…くっ…」
「晋助…そりゃあ俺も同じだ…めちゃ悔しい…悔しくてどうにかなりそうなくらいだよ…でも…
…俺は……今や、俺は、お前の方が…もっと大事なんだ…」
「…銀…時…」
「助かって良かった…怪我だけで済んで良かったって言うぞ、俺ぁ………
痛むか?…水、飲めそうか?……」
「…ああ…」
そっと晋助の上体を起こし、支えてやる。
水筒の口を、その口元まで運んでやり、ゆっくりと飲ませた。
「…んん…」
「しばらくは水で冷やそう…後で包帯を巻いてやるから…
まずは眠れ…俺がずっと側に居るからさ…安心しろ…な…」
「ふふ…天下の白夜叉を独り占めか…こりゃあ…心強い…」
「そうだぞ…白夜叉がついてる…お前に…誰にも指一本触れさせねえ…ふふ…」

薄く笑う晋助に安心して、銀時も微笑み返す。
今までに一度も晋助の口から「白夜叉」と呼ばれたことが無かったので、
銀時は一瞬緊張したのだが。

だがこの時、銀時は嬉しく思えた。
今はこの傷付いた朋友を護れる力を兼ね備えた「白夜叉」となって、
どんな敵も倒してやろうと決心する。
今の自分は天人を倒すために剣を振るう白夜叉ではなく、
友を護る白夜叉となるのだ!

それはなんと強い自信だったろう。
「白夜叉」…それはなんと幸福な字名だろう…と。

「…ほら…晋助……眠れ……大丈夫だ…」
「……」
銀時はそっと晋助の黒髪を撫でた。

横たわる晋助の脇で、刀を抱えて木の幹にその身を預けた。
目は閉じている。
目からの刺激が無い分、休養が取れる。
その分耳を澄ませる。視覚を閉じて聴覚だけを働かせるのだ。
わずかな月明かりだけ。それも深い森の中ではほとんどその光は届かない。
この漆黒の暗闇の中では目を開けていたって敵の姿は見つけられない。
無駄なことだ。視覚は必要ない。
ならば先の水音と虫の声、わずかな晋助の唸り声以外の音が耳に飛び込んで来るのを察知するためだ。
追っ手が来たなら草を踏みしめる音がするだろう。
岩を踏む音が聞こえてくるだろう。
…幸いにもそれらの音は聞こえてこなかったのだが。


だが晋助は何度もその痛みの為に起き上がった。そして叫ぶ。
「こんちくしょおおおっ!」
「大丈夫だ、晋助っ!闘いは終わった!もう敵は居ねえ!」
「はあっ!はあっ!ちくしょおおっ!ああっ!」
「晋助っ!晋助っ大丈夫だっ!」
傷の痛みと高い熱とで意識が朦朧としている晋助は、いきなり飛び起きて叫ぶ。
その都度銀時は晋助の身体を抱きしめて諭す。
そして周りを見渡す。この声が響かなかったろうか?
まだ闇は深い。………追っ手は来ない。

晋助を護ること、追っ手を察知すること…今の自分の果たさねばならぬ任務は非常に重い。
左目を中心に巻いた包帯には、赤く滲む血。
薄い月明かりの下でもそれははっきりと分かる。
再びの出血が見られた。
おそらく痛みも尋常ではないだろう。

「ああっ!ぎ、銀時!く、黒夜叉が!先生が!ああっ!」
肩を捕まれる。激しく揺さぶられる。
「晋助!大丈夫だ!俺が居るから!」
こちらからもしっかりと肩を掴む。
「…ああ…くそう…ぎ、ぎん…とき…うう……」
「…しん…すけ…」
「…うう……」

銀時にもたれかかって来た。
身体が密着すると晋助の熱のある身体が燃えるように熱かった。
汗もびっしりとかいている。
銀時は苦心して上着を脱がせて、その上着は敷物にした。
呼吸を楽にしてやろうと、胴を護っていた鎧も外す。
「…大丈夫だから…な…晋助……」
背中をゆっくりと撫でてやる。
晋助はしばらくは興奮して震えていたが、少しずつその身体から力を抜いて行った。


…密着して気がついた…晋助の勃起。
それは硬く上を向き、熱く燃え滾っている。
それは衣服の上からもはっきりと分かった。
「……晋助………ぬいてやろうか?…」
「…はあっ…はあっ…」
「辛いだろ…これじゃ…俺がぬいてやるよ…な?…」
「はあっ…!んんっ!」
服の上から晋助を握りしめ、上下に擦る。
そして先端を刺激した。
晋助は身をよじった。

「…んあ…ああっ…」
「…出しちまえばいい…な…」
銀時は晋助を横たわらせて、たっつけ袴を下した。
そして下帯を解いて、晋助の猛りを掴み出した。
「…ん…んん…あ…く…」
「大丈夫だ…晋助…俺が楽にしてやるよ…出しちまいな…」
「は…あ……んん…」
意識の無い晋助だったが、その声に艶が混ざった。

重傷を負って意識が無くとも、たとえ瀕死の状態であっても雄の猛りは勃起することを、
今まで多くの同志の死を看取り、看病してきた銀時には充分に分かることだ。
先ほどまでの自分だって勃起していた。
だが晋助の看護に当たっている内に、自分の熱は収まった。
しかし晋助の身体はその怪我の痛みに耐えきれず、
猛りは収まるばかりか一層燃えたぎるのであろう。

…ふううん…デカくなってからは初めて見るよ…晋助の…。
幼い頃、素っ裸になって川や池で遊んだ時にはそんなものはじっと見なかったっけ…
てか興味も無ければ裸が恥ずかしいものでもなかったし…
小太郎とか、みな男同士で風呂に入ったこともあるし…ふううん…これ…これが勃った晋助か…
銀時は少しの間、郷愁を感じた……晋助の勃起を見て。


思い直して銀時は身を屈めて晋助の猛りを頬張った。
それは硬く、熱かった。
そして充分に濡れていた。
「んあっ!」
晋助の声が上がる。
それは痛みではなく、快感であることを銀時に教えているのだった。

「…んん…ふ…し…しん…」
深く咥えて唇をすぼめる。
舌を使って舐め回す。
その手に握って、上下に擦り上げる。
「…はあっ…あ…ぎ、ぎん…」
「はあっ…はっ…そうだ…俺だぞ…んん…」
「…こ、この…野郎…なにして…やがる……ん…」
「お?…起きたか?…んんっ…いいから…やらせな…」
「ば…馬鹿…野郎…よ…よせ…んんっ…あ…」
「ぬいちまえって…ん…任せな…って…んんっ」
くちゅりくちゅりと静かな森に濡れた音が響いた。
「…う…馬鹿っ…は、放せ…あっ…!くっ」
「…こんなに…してたら…辛い…だろ?…俺しか居ないんだからよ…照れなくて…いい…から…んっ」
「よせって…言ってるのが…聞こえ…ねえか?…この……
馬鹿銀…とき…っうっ…」
銀時の唇は執拗に晋助を頬張っている。
「はあ?悦くねえ?俺、上手いと…思うけど?ふふ…ん…」
「…ちくしょう…ん…上手い…ってえコトは…分かったから…なあ…ぎ…ぎん…とき…」
「はあ…何でえ?…ん?痛えか?…」
「ああ…傷が…熱くて…顔全体が…燃えるよう…だ……」
「だろ…だったら…他に集中すれば…いい…じゃんか…」
「ぎ、ぎん…」
「こっちに…これに集中してろ…くちゅ…いい…だろ…?」
「くうっ…」

晋助が腰をよじったが、銀時はその猛りを放さずに、更に深く咥え直した。
唇を上下させて舐める。
「あ…あ…ま…待て…銀…とき…おい…ん…」
「何でえ?…もっと…舐めて…欲しいか?……」
「ち…ちが…違う…あ…」
「違う?何だよ?…くちゅ…」
「銀…とき……俺に…跨がれ…そして…挿れろ…自分で…」
「…え?……それって……俺が…ネコってこと?…」
「…ふん…」

晋助の目が細められた。
銀時は晋助の猛りから口を離す。
口元を拭う。だが手は晋助を握り締めたままだ。
それは一層硬さを増した。
じっと晋助の目を見上げると、その目が光ったように見えた。
苦しそうな表情に変わりはないが、口元にも妖艶な色が見えた。
息使いが変わった。

…そうか、口じゃない方がいいんだな?…

「…俺に…突っ込みたいってこと…だな?」
「ふん…この…痛みを…忘れさせて…くれるんだろ?……」
「おう、いいぜ……分かった…」
銀時も目を細めた。
お安い御用だと笑った。
俺が上で踊ってやれば、晋助の身体の負担も減る。
それにぬいてやるならば、その方が俺にも都合がいい。
晋助の勃起を見て、自分も十分にその気になってきたのが分かっていたからだ。

銀時は着ていた羽織を脱ぎ、鎧と手甲も外した。
白いたっつけ袴と下帯を脱ぐ。鉢金の付いた鉢巻も外す。
帯も解いて、白い着物がただ羽織っただけの状態になった。
その着物に負けないぐらいに白い銀時の胸が見えた。

……晋助はこの一連の銀時の様子に目が釘付けになった。
俺は今までにこいつがいろんな男と寝ているのを知っている。
そいつらも、今の俺と同じように、この興奮を味わったのだろうか、震えたのだろうか?
むらっと嫉妬心が湧いて出たのを晋助は感じた。
だが男が着物を脱ぐ仕草など、ちっとも色っぽいものでは無いことぐらい分かっているのだが、
なんとこの銀時のこれらの仕草は胸が熱くなるのだろうか。
何が他の男と違うのだろう?何がこいつを、そんなふうに見せるのか?

羽織を脱ぐ時に動く肩、手甲の紐を解く指の動き、
鉢巻をぐいっと上へ外す時に見えた手首の反り返りと、わずかに曲げた首のライン…
二の腕の筋肉の、なめらかな盛り上がり…
どれもみな目を刺激する。何故なのだ?
……これを両の眼で見たら、どんなに気が狂うだろうか?
なんと残念なことか。
白い羽織に白い着物と袴。
そしてそれを脱ぎ去っても目の前に現れるのは、銀時のその真白い肌の美しさ。
白!白!白!
目の前に居るこの獣はどこまでも真っ白いのだ!

あちこちにある大小さまざまな刀傷の痕さえ、光って見えた。
まさしく武運の勲章のようにさえ。
いや銀時の白い肌など、もう子どもの頃からとっくに知っているし、
川にだって風呂にだって一緒に入ったし。
豊かな丸い乳房がある訳でもなく、細い首筋に見惚れる訳でもなく…
そんな女っぽい所など微塵も無いというのに。
何がこいつをこんなに艶っぽく見せるのかが分からない。

この、男を刺激する一連の仕草を、無意識にやっているのだとしたら、こいつの本性は真、鬼だ。
雄を狂わせる魔性の匂いを発する鬼。
この銀時の様子に誰もが溺れるのが、今、分かった。
駄目だ。この白さにくらくらする。勃つ!
こいつをものにしたくてたまらなくなる。
戦場で光るこの白さは、この世のものとは思えない。
それは圧倒的な「強さ」で有り、「欲情の的」になるのだ。

ああ、こいつは本当に鬼の子だと思うぜ。
まさしく「白夜叉」と呼ぶにふさわしい鬼。
初めて会った時に鬼の子だと信じたのは外れじゃなかった。
こいつはまさしく戦場で鬼となって天人たちの命を屠り、
味方の間でも「白夜叉」と呼ばれ、怖れられた。
俺たちは幼馴染みで、ずっと「銀時」としか呼ばないで来たけれど…
多くの同志がこいつを「白夜叉」と呼んだのは分かるような気がする。
無敵に見えた。
どの天人よりも強く見えた。
こいつが居れば、勝てそうな気さえしたものだ。
およそ人間には無い、この赤い目と若い故に異常にしか見えぬ総白髪。
この妖艶な唇の輝き、そして透き通るような肌色。
あの鬼神のような闘いぶり。返り血に真っ赤に染まる身体。
そして全部の敵を倒した後に、戦場にひとり立つその姿。



こいつは戦場でも閨でも白い鬼=白夜叉だったのだ!






@@@
この後に、えんえんと…おお!

「光が生まれる」は10/11「銀誕祭」にて発行されました。
高杉×銀時、土方×銀時 仕様の白夜叉本です。
11/1のスパークにも持って行きます。
銀月も少々ですが持って行きます。
もちろん、あぶかむも有り。

西1、E-01b 緋桜流
どうぞよろしくお願い致します。
お会い出来る方、楽しみにしております!
お気軽に声を掛けて下さいね~!

イベント終了まで、自家通販はお休みです。


↓はお知らせP.


http://mizukijoe.sfcgi.com/hikari-oshirase1.htm



なあに?あの銀さんたら、結野アナがそんなに好きなのお?
メロメロ。人格変わってるし。
でもまあ憧れの女子アナを前にしたら、男はみんなああなるかな。
微笑ましいったらありゃしない!


銀魂映画化、本当でしたね!
空知先生、おめでとうございます!
絶対観に行くよ~~♪










 
このお話はその2と繋がっていません




「銀時、銀時…」

馬小屋の戸を少しだけ開けて声を掛けてみたが返事はない。
「銀時…出て来ませんか?外はとてもいい天気ですよ」
「……」
「…お腹がすいたでしょう……じゃ……ここに置いておきますから……食べなさい……」
「……」
「…銀…時?…」
「せんせえ~~っ。おはようございますう~っ」
「…!もうそんな時間に…はあい!今行きますよ!」
「おはようございますう!」
「おはようございますっ、せんせえ!」
「…疾風(はやて)…銀時を踏み潰さないようにね……」
静かに戸を閉めて、足早に学舎へ向かう。
しばらくして、馬小屋の中の子どもはごそごそと這い出て、
戸口に置かれた握り飯を掴んで一心不乱に貪った。
ぶひひ…と馬が一声鳴いた。


「先生、おはようございます!」
「おはようごさいます、先生っ」
「ああ、桂君、高杉君、おはようございます。君たちはいつも早いですね」
「はい。今朝は疾風の餌やりの当番ですから、僕」
「ああ、高杉君。今朝はもう餌をやりましたから…大丈夫ですよ」
「え?先生が、ですか?な、なぜですか?」
「ああ高杉君…夕べから疾風が何度も鳴くので、お腹がすいているのかと思いましてね、
朝早くにもう餌をあげてしまったのです。
そうしたら落ち着いたようですよ。
だから今朝は結構です。お当番の君には悪い事をしてしまいましたね。すみません」
「え?いえ、先生。…そうでしたか…」
「さて…今朝は最初にやっとうのお稽古です。
物置小屋から竹刀を全部出してきてくれませんか?高杉君。
今日の疾風の当番の代わりに…いいですか?」
「あ、はい。分かりました」
「高杉。僕も手伝うよ」
「うん、ヅラ。行こう」
「ヅラじゃない、桂だ!」
ふたりは小突きあいながら物置小屋に向かった。


あんなふうに、笑ってくれるのはいつになることか……
…松陽は小さな溜息を洩らした。



ここは吉田松陽の私塾だ。
隣近所の子どもらが多く集まり、松陽は剣術や読み書き、
算術などを指導して生計を立てていた。
先の桂=桂小太郎と高杉=高杉晋助もこの塾の生徒であった。

この塾の師である吉田松陽は、その思想において穏健で思慮深い考察を持っていた。
剣術では鋭い技を放ち、高杉ら子どもたちにも容赦なく打ちこんでくるその剣筋は、
子どもらの憧れを一気に集めている。
洋の東西を問わずに語られる学問の手ほどきも、それは驚くべき知識量であった。
更に独自の温かな目で見た世の中を説き、
その穏やかな口調と表情は松陽の奥の深い「徳」を推し量ることが出来る稀有なものであり、
それは小さな子どもたちの心にも充分に響いて、真の尊敬に値する人物であった。
この村の大人たちにも先生、先生と慕われ、学問以外にも意見を求めて来る者も多かった。

だが世の中の流れは松陽には厳しく、独自の学舎を持つ多くの思想家は危険分子として睨まれ、
このような田舎での暮らしを余儀無くされていたのだ。


松陽は争い事を好まない。
皆で手を取り合って生きて行ければ良いと考えている。
子どもたちにもそれを分かってもらえたら…
子どもたちが大人になった時に、一番大切なものを護れるだけの力を持てるようになって欲しい…
誰にも頼らずに、自分自身で道を切り開いてゆける力を持てるようになって欲しい…
少しでもここで学んだことが役に立ってくれたら…
たとえそれが小さな力であっても皆で合わせて行ければ、
きっと世の中の平和に繋がることだろう……
松陽の教えには、それらの想いが深く込められていた。



「ええい!やあ!」
「いやあ~~っ!」
かきん、かつん!
竹刀のぶつかる音が青空に響く。
馬小屋の中の少年は握り飯を頬張りながら、そっと戸を開けて外を見た。
何人かの少年が竹刀を振りかざして闘っている。
なんだかみんなへなちょこに見えるのだが
もぐもぐ…へええ…
昨日、俺を連れて来たオトナが先生か…ふううん…もぐ…
「ぶひひ」
「あ、何すんだよ、この!」
疾風と呼ばれていた白馬だ。
白いたてがみが美しい。
疾風が銀時の肩のあたりをその鼻先でつついたのだ。
「うるせえよ!これは俺んだ!やらねえよ!ふん!」
「ぶひひ」
「何だよお、このお!てめえは草を喰ってろ草を!」
「ぶひひ」

疾風は松陽の馬だ。
毎日、塾の子どもが交代で餌や水をやりに来る。
だから子どもには慣れているのだが、この銀髪の子どもは初めて見る子どもだ。
それに夕べいきなりこの小屋へ入ってきてごそごそと干し草の山の中に潜り込んで寝てしまい、
朝になってもまだ居る。
いい加減、出て行って欲しい。
疾風はそう思ってつついたのだが、少年には通じていない。


「では…皆さん、部屋へ入りましょう。竹刀は高杉君に集めて下さい」
「はあい」
「はい、先生!」
子どもらが竹刀を集めている。
そんな様子をこの銀髪の少年はじっと見ていたが、
お腹がいっぱいになったのでもう一眠り…とまた干し草の山へ飛び込んだ。
すぐに寝息を立て始める。
「ぶひひ!」
疾風が抗議の声を上げたが、少年にはもう聞こえなかった。


…日が傾き始めた。間もなく夕刻。
「さようならあ、先生」
「さようならあ!」
「はい、さようなら。また明日に」
子どもらが散りぢりに帰って行く。
先の桂や高杉も風呂敷包みをその背に背負い、帰り支度を始めた。

「ああ、帰りには疾風に水をやらなくちゃ…」
晋助は自分が当番だったことに気が付いて、いそいそと馬小屋へと向かった。
井戸の脇には疾風専用の桶が置いてある。
桶に水をいっぱいに満たして、戸を開けると…
「疾風。水をやろうな。…え?ええ?…ぎゃああああ~っ!」
ばしゃん!
水の入った桶は地面に転がった。晋助も転がった。

「どうした!晋助っ!」
幸運にもまだ庭に居た小太郎がすっ飛んで来た。
「大丈夫かっ」
小太郎は懐に入れている小刀をさっと抜いて走った。
賊か?熊か?天人か?
小太郎は焦った。
「あっ!」
「あ、あわわっ、お、お、おま、お前はだれだああ?」
晋助が腰を抜かして叫んでいる。
こぼれた水で袴をぐしょぐしょにしながら尻で後ずさりした。
「お、お前、だ、誰?誰だ?」
小刀を振りかざしながら、小太郎も震える。

疾風の馬小屋に、白い子どもが居た。
ぼやんとした目付きで鼻に指を突っ込んでこちらを見ている。
小汚い、破れた着物。もう一方の手には古びた刀。
今までに見たこともない子ども。
だが白い髪の毛、赤い目。
これはきっと鬼の子だ。そうじゃなかったら天人だ!
俺たちの先生の家に入り込むなんて許せない!
せ、成敗してくれる!

「こ、この…!」
小太郎が震える足で一歩進んだ。
「ああ、ああ、桂君。待って下さい!」
「せ、せ、せん、先生っ!お、おに、鬼の子が、が、居ます、すううう~!」
「せ、せ、先生!た、助けて!」
晋助が涙で訴えるが腰が抜けていて動けない。
「ああ、桂君、高杉君、違います。鬼の子ではありませんよ!
大丈夫ですから!待って下さい!」
「だって、せ、先生!」
「先生~~っ!」
「ぶひひっ(先生)」
「ああ、すみません。説明しなくてはなりませんね。ああ、桂君。
その刀をしまって下さい。傷付けては駄目です。落ち着いて。さあ!」
「で、でも、先生!」
「桂君、その子は鬼の子ではありません。『銀時』です」
「ぎ、ぎんときい?」
「ぎ、ぎ、ぎん、ぎんと、とき?」
「さあ、桂君」
松陽のその声と目の色に真実を悟り、小太郎は震える手で
ようやく小刀を懐に収めた。

「ありがとう、桂君。高杉君を護ろうとした態度は立派でしたね」
「………っ」
「せ、せん……」
「疾風に水をやりに来てくれてありがとう、高杉君」
「ぶひ…」
「ああ、疾風…一晩銀時を泊めてくれてありがとう」
「ぶひひん♪」
松陽は静かに皆の目を見て、ひとつ頷いてから話し出した。

「…さて…みんな、聞いて下さい。この子は『銀時』という名前です。
鬼の子でも天人でもありませんよ。昨日知り合った子どもです」
小太郎、晋助、疾風が目を見開き耳を傾けた。
晋助は震える足でやっと立ち上がった。
だが小太郎の気持ちは収まらない。
いくら先生がそう言ったって落ち着いてなんていられるか!

「こ、こんな白い髪の毛に赤い目なんて…先生、この子はきっと鬼の子ですよ!
だ、駄目です、こんな子を、小屋に入れちゃ駄目です!」
「ぶひひ(そうだそうだ)」
「桂君…人を見た目で判断してはいけないということ…
話したことがあったと思いますが?」
「……っ」
「で、でも先生…」
「ひとりぼっちで戦場に居たのです。お腹もすいていたようですし、私が連れて来ました。
死体が転がるそんな所にこんな小さな子どもをひとりで置いてくることなど出来ないでしょう?
見たところ、君たちとほとんど同じ年頃ではないでしょうか?…」
「………(二人と一頭)」
「何も語ってくれません…でも名前だけは教えてくれました。
『銀時』と言うのだそうですよ。そうですね?銀時?」
松陽が少年を笑顔で見つめた。
だが少年はぷいっとそっぽを向いた。
「こ、この!」
高杉が握りこぶしを作って、ぐっと身体を構えた。
「待て高杉!先生の話の途中だぞ」
「行く所が無さそうで…親も居ないし、孤児ではないかと思われます…
もうちょっとこの家に置いて、少しでも話を聞いてあげられたら…と思っています。
どうかみんなも仲良くしてあげて下さい。お願いします」
「………………(二人と一頭)」

「さ…銀時…お腹がすいたのではありませんか?母屋へ入って一緒にご飯を食べませんか?」
「いや!」
銀時と呼ばれた少年はくるりと後ろを向くと、また干し草の山に飛び込んでしまった。
「ぶひひ!」
「こ、このやろうっ先生のご親切を、よくも!」
「くっ…!」
「あ、待って下さい、高杉君!桂君!大丈夫ですから!」

松陽が怒りに震える晋助と小太郎を馬小屋の外へ促した。
「さあ、さあ、あなたがたも…早く帰らないと駄目ですよ。
日もすっかり短くなってきました。だんだん冬になるのです。
少しずつ明るい時間が短くなる…お話ししましたね?
からすが飛んでいますから、もうすぐ日が沈みます。
暗くなる前に家へ帰って下さいね」

小太郎と晋助は揃って空を見上げた。
確かに西の空が茜色になりつつある。
風も冷たくなってきた。
もうすぐ日が暮れるのだと分かる。
真っ暗な道を帰るのは怖いし、供の者も所定の場所で待ちくたびれているであろう。

「…あ……先生…分かりました……では…さよう…なら」
ぺこりと小太郎がお辞儀をした。
「……せ、先生…さよう…なら…」
晋助もぴょこんとお辞儀をした。まだ少し震えていたけれど。
「はい…さようなら。また明日に会いましょう」

……そしてゆっくりとふたりは歩いて行った。
松陽がその後ろ姿を確かめるように眺めた。




「…ああ、驚いた…」
「…あんな子ども…きっときっと鬼の子だよ?なあヅラ?」
「…うむ…確かにあんな子どもは今まで見たことが無い…
だけど先生がああおっしゃるんだから…きっと人間の子どもなのだと思うけれど…
ちょっと驚くよね…あんなに白い髪…まるでお爺さんのようだよ?
それに夕焼けみたいな赤い目…うさぎだってあんなに赤くないんじゃないかなあ?」
「変だよ変だよ!絶対鬼の子だよ。じゃなけりゃ天人だ。
先生の家に天人が居るなんて…嫌だ、信じられないよ!」
「…でも……ひとりぼっちで戦場に居たなんて………
きっと怖い思いをしたんじゃないかなあ…」
「なんだよヅラ!あんな子の味方をするのか?」
晋助は怒り心頭。きっと小太郎を睨んだ。
「味方とかそんなじゃなくて…きっと僕たちと同じ位の年だろう?
それなのに孤児…
僕たちだって天涯孤独になったら、きっと恐ろしくて生きていけないんじゃないかな?…」
「………っ」
「だから先生はあの子を連れて帰って来たんだね…そしたらあの子は馬小屋から出て来ない…
先生も困っていらっしゃるのではないだろうか?母屋へ誘っても撥ね返していただろう?」
「…う、う、うん……」
晋助がばつが悪そうにうなずいた。
「きっと怖いんだ…先生も僕たちのことも。味方か敵か分からない…
だからあんな態度なんだよ…仕方ないかも…」
「……そ、…そう…か?…」
「…うん、そうだよ、きっと…なあ晋助…」
「な、なんだよ?」
「明日は僕が疾風の当番なんだ…だから朝早くに行ってみる。
そしてまだあの子が馬小屋に居たら…」
「居たら?」
「一緒にちゃんばらごっこをしようと誘ってみようと思う」
「馬鹿ヅラ!先生に対してあんなに失礼な子に、そんなことを!
先生を取られちまってもいいのかよ?先生の家に一緒に暮らすなんて、僕は許せない!」
「晋助!」
「馬鹿ヅラ、あほんだら!もう知らない!」
晋助は駆けて行ってしまった。
「……はああ…」
ひとり残された小太郎は大きなため息をつき、夕焼け空を仰いだ。
「…どうしたらいいのかなあ…ふう…」




松陽は子どもたち全員を見送った後、疾風に水をやり、干し草を与え、
静かにその首を撫でながら語った。
「疾風…銀時のこと…護ってやって下さい…頼みます…」
疾風は松陽の気持ちが分かったのか、その首をわずかに動かした。
「ぶひひ…」
「頼りにしていますよ…」


干し草の中で眠る銀時の姿を見ながら、松陽は小さく頷いた。

夜になり、松陽は再び握り飯を作って、
温かな味噌汁と共にお盆に乗せて馬小屋へと来たのだった。
もうすっかり外は暗い。
銀色の星が瞬いている。
雲がゆっくりと流れているのが分かる。

……冷たい風は初冬の気配が感じられた。







@@@松陽先生と子銀と子桂と子高杉と…
とても微笑ましい!大好きです。
この後にもなんだかんだがありますが?ふふふ…


原稿は完成して無事に入稿しました。
10/11にちゃんと出来上がっているといいのですが…
10/11の「銀誕祭」は土銀オンリーなので
土銀部分も後半にあります。
武州時代の、若いポニーテールの土方に遭遇します。
高銀の部分もアリ。
節操ナシな白夜叉ですが、戦争中ですから(笑)
「白夜叉降誕」ベースです。
お楽しみに★






ネコ銀さんが消えてしまう所はまじに泣いてしまいました…









 
冒頭の部分より抜粋




凍りつくような大地。
吹きすさぶ強風。
黒い魔物のように揺れる木々。
陽が沈むまであとわずか。

「……は…銀…時…す…すまん……」
「いいって。痛むか?」
「…いや……」
「そうか。それなら良かった。しっかりしろよ。もうすぐ今夜の寝ぐらに着くらしいぜ?」
「…悪い…はあ…はあ…」
「悪くねえ。お前のおかげで背中がぬくいっての」
「代わるか?金時?」
「いや大丈夫だ。おめえの背負ってるその荷物と交換なんてイヤだからな」
「そうがかあ?金時~、ぶははっ」
「諸君、もう少しだ。あの森の中に身を隠そう」
「ほらほら、ヅラの黒い尻尾が揺れてら。あとちょっとだ」



桂の率いるこの小隊は、先の闘いで多くの死傷者を出した。
近隣からの志願兵もこの頃はまったく増えない。
よってメンバーは減少するばかり。
だが怪我人は増える一方だ。

銀時もいま、怪我をした同志をおぶって歩いている。
坂本は少なくなったとは言え、重く扱いにくい武器やら敷物などの荷物を背負い、
高杉は隊の最も後方を歩いている。
桂は先日怪我をした足を無理やりに動かしている。
痛く辛いはずなのにその素振りも見せずに、むしろ笑顔で
皆の先頭を歩いていた。


「さて…この森の中なら雨が降ってきても大丈夫そうだ。
皆、御苦労。今夜はここに陣を張る。それぞれに荷物を下して休んでくれ。
ただしあまり奥の方まで行かぬように。
俺の声が届く範囲に居てくれ」
「おうおう、さ、着いたぜ。水やろうか?」
「………金時…手伝うぜよ……」
「平気だよ!この!モジャ!」
「……こちらへ下せ…もう……息をしとらんよ…」
「…え?…」

銀時の背におぶわれていた同志は既に息をしていなかった。
つい先ほど話したばかりなのに…
いつ事切れたのだろう…気が付かなかった。
銀時の背を温めていた生の体温。
事実まだ身体は温かだった。
だがそれは既にものを言わぬただの物体になっていた。

「…ほれ…鎧も外してやろうかの…窮屈だったろうにな…」
「………そう…だな…」
「おい、佐藤の刀を持っていた奴は誰かいのう?持って来とうせ」
隊の中から無言で刀を持って来る某志士。
「墓…掘ってやろうかの…さ……」
銀時は佐藤の身体を下して地面にそうっと横たわらせた。

「…水…やろうな…佐藤……」
「金時ば背中で果てたのは幸運だったのう…きっと安心して逝けたろうに…」
「…安心して逝ける魂など…ない」
「…金時…」
「こいつ…確か女房子どもが居たんじゃなかったっけか…」
「…ほうがか。そりゃ…気の毒にの…帰りを待っている家族が居たがか…」
「あ、しまった。俺、さっき川で汲んだ水、ほとんど飲んじまったんだ!」
銀時が竹で出来た水筒を振る。
ちゃぽんと空しい音がした。

「ほら…これを使え」
声は高杉だった。
「それと…せめて顔に付いた血ぐらいは拭いてやろうぜ」
「…そうだな…」

銀時と高杉と坂本と…
森の奥に穴を掘り、遺骸をそっと地面に下ろした。
「佐藤…今までご苦労だった」
桂が合流した。
「佐藤とは…よく背中を護り合った…なかなかの剛腕の持ち主だったが…残念だ…」

桂が静かに佐藤の頬に触れた。
もうすっかり冷たくなった頬は、血の跡も泥の汚れもない綺麗なものだった。
皆で土を掛け、刀を墓標代わりに立てる。
そして眼を閉じて手を合わせた。

「お別れだ、佐藤…見ていてくれよ、最後まで。俺たちの闘いを…」
桂は佐藤の刀にわずかに酒をたらした。
「いったい…いくつ墓を造ればいいんだよ…俺たちゃ…」
「…銀時…」
「なんだか…毎日のようにこんなことしてるじゃないか。
今度は誰の墓だよ?え?俺か?お前か?なあ!ヅラ!」
銀時が桂の襟元を掴んで揺らす。
「お前は最後まで生き残ると思うぞ、銀時」
桂は静かに銀時の目を見て答えた。
「な、なにを!」
桂に殴り掛かりそうな剣幕の銀時を坂本が押さえた。
「待て、金時!」
「くそ!もう墓なんか掘るのは嫌だ!」
「待て、金時。やめろ!こっち来い!」
坂本は暴れる銀時を引きずりながら奥へと消えて行った。

「…お前…足は…どうだ?…」
「晋助…お前の肩はどうだ?…」
「…いんや…」
「俺も平気だよ…」
わずかに桂の口元が緩む。
高杉も同様に口元を緩めた。


疼く傷の痛みと蓄積された疲労。
怪我をしていない者など、誰一人として居ない。
毎日のように出る死者。
そして墓作り。
だが今日も自分らは無事だった。

ああ、せめて明日こそ、誰も死んだりしないように。
明日こそ墓作りなどしないで済みますように。

こんなことを考えるのは侍じゃないと思っていた。
己の意思に従って闘いに赴く…それこそが侍の気概だ。
死など恐れずに進む。
死など考えずに剣を振る。
弱音を吐くことこそ侍の最も恥じるべきことだ。


だが戦争初期の頃とは次第に考え方が変わって行った。
日々険しくなる戦況、膨大な死傷者、武器や兵糧の不足。
それらが桂をはじめ多くの志士の考え方を変えたのだ。
毎日行われる行事とも成った墓作り…土を掘れば掘るだけ麻痺して行く感情。
当たり前の行事にさえ成ってしまったこの神聖なる儀式は、
死者を送る厳かな行為にも関わらず、もう哀しみすら湧いてこない。涙も出ない。
何の感情も持たないようになってきてしまっている。
だがそれが死への恐怖を多少なりとも薄めてくれている。
今夜の銀時は、何故か久しぶりの憤怒だったのだ。
それを目の前で見た高杉と桂の心にも、少なからず動揺が走る。

隠そうとしなくとも、表すことが出来なくなっていた深い悲しみ。
同胞の死という非常に重い衝撃を受け止めるための、姑息な心の防具。
深い悲しみをそのまま受け止めることが出来ないから、わざと表に出さない。
傷付いていないという顔をする。
明日は自分かもしれないという死の恐怖を乗り越えるための、手段。
…それが「無言」で墓を掘ること。
こうして出来上がったのは「心の麻痺」だったのだ。

銀時がことさら佐藤と仲が良かったという訳でもない。
なのに今夜の銀時の荒れようは、自分らの心の動揺の現れであると感じる。
桂にも高杉にも充分過ぎるほどに、思い当たることばかりなのだ。

「…銀時は……腹が減ってたんだ…」
「晋助…そうだなあ…はは…そろそろ甘いものが必要か?」
「だなあ…今度町へ下りたら、甘いものを食わせてやらんとまた駄々をこねるぞ」
「…ふふ…」
桂がぽんと高杉の肩を叩いて歩いて行った。
後ろ姿で手を上げた。足は引きずっていた。
先ほどよりずっと重く引きずっていた………



「バカヤロ!放せえ!」
ぷんぷんと怒りながら、銀時が叫ぶ。
坂本はその腕を掴んで、引きずるように歩いていた。
「ほれ金時、やるぜよ。な?」
にこにこと袖から出した巾着には、小さな金平糖。
「は?は、はあ?そ、そんなモノじゃ俺は、は、は!」
「まあ喰え。甘いぞお~?いらんならわしが…」
「あ!喰う、喰います、頂きます!」
銀時が慌てて坂本の手から金平糖を奪い取り、口へ運んだ。
一気に5つぐらいを放り込んだ。
「美味いがか?こりゃふるさとの菓子での。いい品じゃ」
「もぐ…う、うん…うまい…な!だ、だからって!こんな
もんじゃ俺の機嫌は直らないぞ!ふん、子どもじゃネエんだからな!ちくしょう!」
「ほれ、もっとやるぜよ」
坂本が銀時を覗き込んでにやりと笑う。
銀時も…しぶしぶその掌に受け取って再び口に運んだ。

「…佐藤…な…あいつも俺のこと、『銀時』って呼んだ……」
「…知っとうよ。あいつな、金時をホンマ強い奴だと言ってたからのお…」
「優しい声で呼んでくれてた…『銀時』って…マジで心が温かくなるような声だった…」
「そうさなあ…みんなに分け隔てなく優しい奴だったからの…
わしも一緒に酒を飲んだ。その時に分かったぜよ…」
「痛くて辛かったろうに…うめき声すら我慢していたのだろうな…
ただ黙っておぶわれていたよ……」
「ふむ…おんしを気遣っていたのだろうの…」
「…後から入ってきたヤツなのに『銀時』って…
後から来た奴らは皆、俺のことを『白夜叉』なんて呼ぶのにな…」
「…金時…」
「嫌な通り名だぜ!ムカつく!敵からそう呼ばれる時にはムカつかねえけんどよ、
仲間内から呼ばれると…腹が立つ」
「おんし、まあだ分からないってか?前にも言うたじゃろうが。
おんしの白は、みんなの安心の白じゃと」
「そんな方便…信じられねえんだよ!」
「金時…」
「その名前でも呼ぶな!俺は『銀時』、銀だ、ぎん!」

さっと向きを変えて銀時が走り出した。
坂本も慌ててその後を追う。
「金時!待て!それ以上奥に入ってはいかんぜよ!」

坂本は銀時よりも背が高いのでコンパスが長い。
それに身体能力も高く、足も速い。
すぐに追いついて無理やりに銀時の腕を掴んでこちらを向かせた。
「待てと言うのに!金時!何があったがか?今夜のおんしは何ば変だぞ?」
銀時はきっと睨んで…
「うるせえ!佐藤が死んだ。いい奴だった。墓を掘った。
だが明日になったらもう忘れちまう。この森だって、もう二度と来ない。てか来られない。
家族に墓は何所だと聞かれても答えられないだろ?
それに腹が減った。めちゃくちゃ腹が減ってる。
だが明日もきっとこんな日だ!それが悔しい!
なんか…腹が立って仕方がネエんだよ!」
「金時!」
「うるせえってばよ!…もう放っといてくれ!」

ずんずんと銀時が進む。
坂本は早足で追う。銀時が急ぐ。
坂本も急ぐ…そんなこんなが続いた。
しばらくして根負けした銀時が叫んだ。
「…何だって言うんだ!モジャ!帰れ!ひとりにしてくれ」
振り向いた銀時は目に涙を溜めていた。
坂本は驚く。
「金時…」
「…だって…帰りたかっただろ?…家族の元に…こんな…
見知らぬ土地で死んで荼毘に付されて…
何が安心して逝けただよ…くそ!…う…馬鹿モジャあ!」
「金時!」
坂本は無理やりに銀時を抱きしめた。
「この!は、放せ!ひとりにしといてくれって言ったろ?
放せよこの!」
銀時が暴れるが、坂本は黙って銀時を抱きしめ続ける。
力を入れて抱きしめ続けた。                                             
銀時は何やらぐずぐずと叫びながら暴れていたが、
坂本の強引な抱擁に邪魔されて動けず、しばらくしてその力を抜き、黙って抱かれ続けた。

…坂本の力は本当に大きいと思う。
腕相撲などもよく隊では行われていたが、いつも一番になるのは坂本だ。
ぎゃははと笑いながら、こっちをおちょくっているのでないか?
と思うような態度でも誰も勝てない。
勿論銀時も勝ったことがない。
右腕も左腕も。
だからこれ以上は無駄、腹が減るだけ…と諦めたのだ。

「そうじゃろ?ますます腹が減るぞう。諦めろ。ははは」
「…チクショウ…んだよ…この…」
腹の中のことまで分かってるのかよコノヤロ~と思うが、
坂本も相当空腹だろう…と銀時にも分かる。
結局今夜配られたのは干し飯というわずかな食糧だけ。
乾燥していて美味しくもなんともない。
坊ちゃん育ちらしいという坂本の噂から考えると、こんな
不味い飯は我慢がならないと思うのだが、坂本がそういう文句を言うのは聞いたことが無かった。
「酒ば飲みたいのお!」や
「綺麗なお姉ちゃんと寝たい」などは
時折聞くけれども…
自分らよりも幾分年長な坂本は、その剛毅な性格、奔放な笑い声、
だが大きな身体に似合わない細かい気配りが出来る男として
隊でも貴重なムードメーカーになっている。

先の大打撃を受けた闘いでも、坂本は多くの天人を退治した。
それも味方を護りながら闘うのだ。
負傷者にも気を配り、隊員の怪我にいちいち傷つく桂隊長にも
「なあに…今日の闘いはきっと敵さんにも大打撃だからの」
などと言い、「あの桂」を微笑ませたり出来る。
闘いの時には外す黒い丸メガネ、サングラスはなぜか失くさない。
大事なおしゃれメガネなのだという。
聞いたらひとつしか持っていないとかぬかす。
それだけ懐は護られているということか。自身の剣で。
そして大きな声で笑う。皆も釣られて笑えたりする。

だから坂本の力は大きい…とても大きいのだ。





@@@
入稿まであとわずかの秒読み段階。
こちらはお話の最初の部分で4~5Pほど。
この前に小さな漫画が入ります。
後半にも小さな漫画を入れる予定。

予想では124P~130Pぐらいで1000円ほど。
委託書店は
現在では明輝堂さまにお預けする予定です。

初売り 10/11「銀誕祭」
高杉×白夜叉、若い土方×白夜叉
チビ攘夷&先生も登場。

次回は先生との部分をUPの予定です。








 
この作品はアニメツアー「白夜叉降誕」ベースの白夜叉本「光が生まれる」からのピックアップです。

その1となっていますが
作品の後編中盤あたりでおよそ8P分、80P頃の予定。
本発行時には文字や文章の加筆修正有り。
18禁小説。漫画も少しだけ入る予定。

この本は10/11「銀誕祭」にて発行の予定です。
スペ C03 「緋桜流」

たぶんA5/150P前後/価格未定/委託書店未定(無いかも?)
攘夷戦争時代の銀時=白夜叉本、チビ攘夷&先生も登場。
高杉×銀時、若い土方×銀時の情事有り。




「光が生まれる」その1 9.16


「のう金時…わしはな…もう…仲間の死ぬのを見たくない…仲間の怪我を見とうないんじゃ…」


今日もひどい戦闘だった。
多くの仲間が死に、負傷した。
もうこれ以上の闘いは無駄だと誰もが分かっている。
だが歩みを止めることは出来ないでいた。
自分ら吉田松陽塾の塾生たちにとってのかたき討ちは、
まだ終わっていないからだ。
侍たるもの、己の目指した目標を無事に叶えるまで、それを途中で放棄することは出来ない!

特に桂はそれを護り続けていた。
そして強く自分にも仲間にもそれを言い続けて心を奮い立たせていた。
高杉もそれに深く賛同した。
俺は先生の仇を討つ、この目の仇を討つ、と。

だが銀時はこの闘いは無駄であると思いつつ、隊から離れられないでいる。
味方に多くの犠牲者が出る闘いに意味が有るとは思えなかったが、
桂や高杉が闘っている以上は、俺はそれを護る刀にならねばならぬと思っていた。

…などと理由はかっこ良く付けることが出来る。
そんなことよりも何よりも、一途でまっすぐな目をした桂や高杉の、「仲間」で有ったからだ、自分は!
やっと得た仲間だ。
護りてえんだよ、俺は!俺の仲間を、な!


だが坂本は違った。途中から隊に入って来たから…では無い。
彼は他の隊士たちとは違う考えを持っていた。
仲間が犠牲になるのを見たくない…これが一番の理由。
そして二番目の理由はあれだけの文化や技術を持っている天人たちと、
利益を与え合う商売=貿易が出来たら良いのにという考えがあったからだ。

地球にこれだけ多く来ている天人たち。
どの星から来たのだろうか?
どんな船で地球まで到達出来たのだろうか?
坂本はこの辺りに非常に興味をそそられた。
あの優れた巨大な軍艦や宇宙船。
強力な武器や豊富な財力。
天人らも向かって来る自分ら攘夷志士を倒そうとはしても、
一般民衆らに無闇に手を出してこない。

世の中の流れはどんどんと変わって行くように見える。
友好とは言えないまでも、地球人を自分らの支配下に置き、言うことさえ聞けば、
共存も許すという態度が見えるようになってきたからだ。
要するに植民地状態なのだが。
その流れを知った地球人のほとんどが、これ以上無駄に抵抗して殺されるのを怖がり、
天人へ反抗するのを辞めた。
そうすればどうにか平和な毎日が送れるからだ。

江戸にも遂に巨大なターミナルが建ったと聞く。
それは多くの天人たちが乗って来る船のためのメンテナンス場であり、
宇宙への帰還のためのエネルギー補給場、簡単に言えば「宇宙空港」である。
江戸の中心に建つその巨大なターミナルは、
我ら地球人が天人支配下にあることを強く感じさせる威圧的なものであり、屈辱の象徴でもあったが。



「わしな…この宙(そら)へ行くぜよ。このまま天人たちと闘っていても、もう先は見えた…
もうこれ以上仲間が減るのに耐えられんじゃきのお…
わしゃ…宙からの、こう、星ごと釣り上げられるような漁をしての…デカい魚ば釣り上げて、
天人たちを驚かせてやりたくてのお…」

一夜の仮宿として壊れかけた寺へと避難した隊。
すっかり夜も更け、皆が思い思いの場所で寝転び、足を伸ばしていた。
怪我には包帯を巻き、残りわずかな水筒を回して。

その瓦もまばらな屋根に上って、坂本と銀時は星空を見上げていたのだ。
銀時は寝っ転がって居る。
その屋根のすぐ下には桂も高杉も居た。

「なんばせんではおられんわ…だがの、天人たちと刀振り回して闘うばかりが闘いじゃのうて。
あの天人たちの船の優れた装置ば見たら、ああ勝ち目はもう無いと思うたわ。
あいつらの持っている力は、地球人の何倍もすごいじゃろう?
敵うわけないがじゃ」

坂本は空を見上げながら語り続ける。
銀時の返事が無くても。

「あんな技術で作られた船が欲しいのお…そしたらの、天人たちと対等に話せるじゃろうに。
そうしたら、天人らと取引をする。そして商売をして利益を得る。
その為のカンパニーを作るんじゃ。
このままおめおめと天人の言うことをホイホイ聞いておるばかりじゃ、
いつまで経っても天人の思うつぼだからの!黙っておられるがか!
そういう力を持った地球人が居る事を、わし自身が証明してやる。
こちらから条件を出して取引をする。そうして地球人の底力を見せつけてやろうと思うんじゃ。
そういう形の闘いがあってもええがじゃろ?
その商売の闘いに、わしは勝ちたいんじゃ!それがわしの大義っちゅうもんなんじゃよ。
そういう形でわしは天人の上を行く。
あいつらの船ば、下に見下ろせる船にわしゃ乗っちゃるぞい!
先の先ば見る闘いがしたいんじゃよ、わしゃあ!」

坂本の力強い声が空に響いたが…つくつくつく…りんりん…と虫の声が聞こえた。
銀時の返事は無かった。

「…どうじゃろ金時…おんしはこんな狭か星に閉じ込めておくには勿体ない男じゃけ。
どうじゃ?わしと一緒に出掛けんか?
あの星の間を縫って飛ぶ船ば一緒に乗らんか?
そしてわしと共に闘わんか?……あ?」
「ぐ~ぐ~」
ここで坂本は銀時を覗き込んだ。
銀時はいびきをかいていた。
しっかりと自分の意見を述べ、金時を共に連れて行けたら…と、熱く熱く語ったと言うのに!

「あっはっはっは~~!天よ星よ神様よ!
こいつの頭に隕石ば叩き落としてやってくださあ~~いいい!あっはっはっは。
………まったく…おんしは大した野郎じゃのお……ほんま、おんしらはエラい奴らじゃ…のう…」
下に居る桂や高杉にも聞こえるかのように、その口調を変えた。
もちろん桂にも高杉にも先程からの坂本の話はみな聞こえていた。
だが相槌は打たなかった。

「おんしらは…気が済むまで闘いを続ける気じゃろうて…
それはかの先生への想いが深く有るからじゃろうのお…
それはそれでええんじゃ。おんしらの闘いはまだ続いちょる。
わしはわしの闘い方で、天人たちに向かうってえコトじゃ…
お互いに、闘い続けるっちゅうことなんじゃ…」
高杉がぎゅっと唇を噛みしめて、下を向いた。
桂はそんな高杉の方向を見る。
だが手は出さない。
じっと見つめるだけだ。

「晋助の…眼が開かんようになって…わしは心が潰れそうになったわ…
どんなにか辛かったろう…晋助は…
そして、それを見ている隊長の小太郎も…すぐ側に居た金時も…
のう…よく皆泣かんとおられるのお…わし…は駄目じゃ…
もう…仲間が傷付くのには耐えられんわ…許せよ、のう……」
「ぐ~ぐ~」
銀時のいびきが響いた。
虫の声と合唱でもしているかのように。
……流れ星がひとつ、彼方へと走って行った。



…坂本の声は哀しげであり、桂は胸が詰まった。
俺がもっとしっかりしていれば、こんなに多くの犠牲者を出さずとも済んだかもしれない…
だが闘いの場において、誰が良くて誰が悪いなんてことは無いのだ。
誰もが真剣に闘っているのだからだ。
そして誰もが一番の英雄であり、その勇気を褒められるに値する。
なのにこの先の見えない負け戦…
士気も落ちているこの状況で、これ以上闘い続けても意味があるのだろうか…
いったい何のために闘いを続ける必要があろう?…

桂も高杉の目の怪我では非常に傷ついてしまった。
二度と開かないだろうその眼。
そして光を見ることはもう叶わないだろう、その左目。
それは自分のせいなのだ…と桂は思っていたのだが、高杉は
「この目の怪我は俺自身の責任だからな。二度と憐れんだ目で俺を見るなよ。
そんなことをしたらお前を斬るからな。
まだ闘えるぞ。侮るなよ」
と言い放った。右目が光った。たくましい言葉だった。

ああ、あの負けず嫌いで意地っ張りで実は弱虫で甘えん坊な幼い晋助がまだ俺の側に居るではないか…
馬小屋に隠れてしまった銀時を引っ張り出す作戦を、
文句を言いながらも手伝ってくれたあの晋助が隣りに居る…
やっとうのお稽古で銀時に負けて涙を見せたあの晋助が居る。
自分に最も近く闘ってくれていた晋助が…そして銀時が居る。
坂本が言うように、そう、俺たちはまだ気が済んでいないのだ。先生のかたき討ちの。
だがこんなことを続けて行っても、おそらく先生は喜んでくれないと思う…そんな迷いが出始めていたのだ。
そこにこの坂本の脱退の言葉…やりきれなさが襲って来た。
…だが銀時のこのいびき…坂本と同じく、笑い出しそうになった。
まったく坂本といい、銀時といい、そしてこの高杉といい、俺はなんと素晴らしい仲間に巡り会えたのだろう。
それだけで充分に、この闘いには意味が有ったのだ。

……きっとあの子は寂しいんだ…誰が敵か味方か分からないから……

小さな銀時を気遣えた小さな小太郎も、本当の意味での味方を得ることで大きくなれたのだった。
鍛えた自分の剣を信じ、仲間の力を信じ、怖れることなく天人たちへと向かって行けた。
躊躇しないで歩みを進められた。
それは揺るぎない大きな誇りとなって桂の心を満たした。


誰もがみな、信頼出来る仲間を持てたことで、大きく羽ばたくことが出来たのですね…
…俺たちは…青い空も海もあるこの美しい星を護るために、
朋友を護るために、侍になれた…
それは……先生との日々があったからこそ、なのです…



桂は高杉の肩にそっと触れた。
高杉はじっと桂のするままになっていた。
もう一度、今度は軽く揺すってみた。
「晋助…」
ちいさく呼びかけた。返事は無かった。
だが代わりに銀時の大きないびきが、空に響き渡った。



大きな空に無数に瞬く星々。
その星のどこかに行くという辰馬。
俺たちはそのお前の行く末と活躍を、この地球から見届ける役目がある。
ああ、行けよ、辰馬…見ててやるぞ。
落ちて来てもちゃんと受け止めてやるからな…!

桂もすっと目を閉じて、高杉の肩にもたれかかるようにして
眠りに落ちて行った…










「じゃあ行くかんな…達者でのう、金時…おんしが側に居ればのお…
面白か漁が出来ると思うちょったがの…」
「ワリーなあ…おれ、こう見えてココが好きなんだ…
まあ、お前は宇宙のどこにでも行って暴れて来るがいいさ。
星でも天人でも何でも、一気に釣り上げる漁をしてこいや…」
「…………おんしゃ…これからどうする気じゃ?のう?」
「俺か?…ま……そうさなあ……」

ふっと銀時は坂本から目をそらし、空を見上げる。
ふたりの上には眩しいほどの青い空と白い雲が広がっていた。



坂本は隊を出る決心をし、少ない荷物と刀を携えて出発しようとしていた。
見送る者は誰も居ない。銀時だけが居た。

「俺は…地球でのんびりと釣り糸を垂らすさ…地べたに落っこってきた流れ星でも釣り上げて…
もっぺん宙にリリースよ…まあ、お前が落っこって来ても知らん顔してるだろうがな。
あはは…」
「…はは…そうか…助けてばくれんかいの…わしは。あはは」
「お前、重いもん。でもよ…ずっと見ててやる。
この地球から。お前の馬鹿っぷりをさ、地球から見ながら大声で笑ってやるから………
安心して暴れてくれば?」
「そりゃ心強いのお…誰かが見ていてくれるというのはの。
こりゃええわ、ふむ!」
「…辰馬…………死ぬんじゃねえぞ。許さねえからな」
「そりゃわしのセリフじゃき。金時。おんしも死ぬんじゃなかよ。小太郎や晋助ば…みんな、だ!」
「…うん……」
「……………おんしが居たからわしゃ……ここまで…走ってこれたんじゃ…金時……」
「…ああ…俺も………そう思ってるぜ……」
にこりと微笑み合った。

坂本の後ろに立っている木から、一羽の鳥が飛び立った。
高く澄み渡る青い空に、その鳥は飛んで行く。
その姿を追うふたりの目は、同じものを見ていた。
ああ、同じものを追い、同じものを見つめて闘った。
あの日々の、なんと眩しく美しかったことだろう。
この、いま、目の前にある大きな空のようだ。
……その鳥の羽音が、ふたりの心に大きく、深く沁み込んでいった。

「……また…おんしらと…会いたいもんじゃ……達者での。
………じゃあな…」
「ああ…」
坂本は笠を深くかぶり直すと、くるりと向きを変えた。
大きな身体が、ちょっとだけうつむき加減に見えた。
先行きが見えぬ闘いに出向く時の、誰もが見せるその背中。
だがいつも坂本はすぐに真っ直ぐ前を向き、足を進めた。
なのに今日の坂本にはそんな雄々しさが見られない。
その坂本でさえ、こんな寂しい背中を見せるとは…!

世の中に、一筋の稲妻になりてその光を見せてやりたい。
その光を胸に、闘って行きたい…
共にそんな願いを胸に抱えて生きてきた。
…おんしらにはおんしらの闘いがある…
…わしにはわしの闘い方がある…
…ああ…形が違っても、その気持ちは同じだったのだな…
お前が一緒に闘ってくれて…本当に良かったよ……
いい闘いが出来たのは、お前のおかげだ…!
銀時は別れのこの時に、この気持ちが持てたことに満足出来た。ああ、本当に。

「おおおい~っ!俺の名前は『銀時』だぞお?間違えるなよお!忘れるなよお~~っ!」
せめて旅立つ友を励ましてやりたくなった。
無理やりに大きい声を振り絞り、その背へ投げかけた。
「うおっしゃあ~覚えたきに!『金時いいいっ』」
坂本が後ろを振り返って銀時に負けないほどの大声で叫んだ。
「…あいつ馬鹿だ…ほんとに馬鹿だ………………ふふ…」

銀時は坂本の後ろ姿が見えなくなるまで、ずっとその場に立ち続けた。
初めはゆっくりだった坂本の足どりは、少しずつ速くなって行くように見えたのは気のせいだろうか。
だが確かな足どりだったことは、俺が見ていてやったぞ、
辰馬よ!

………ずっとずっとその揺れる背中を見ていたかった。






その後の隊はまもなく解散した。
残りわずかな隊士たち全員と相談の上での決定だった。
誰も反対しなかった。皆、解散に同意して頷いた。
高杉はすでに結成されている「鬼兵隊」と共に、別の行動に出て闘い続けると言う。
桂はひとりで考え直してからその後の行動に移ると言った。
そのどちらにも従わぬという隊士たちとはこの場で別れた。
そこに銀時も居た。

「……銀時…お前はどうするんだ?」
「…まだ…決めてねえ…」
「……俺と…一緒に来るか?」
「…いや…お前はひとりで考えたいんだろ?ひとりで行けや」
「…銀時…」
「…じゃあな。ヅラ…元気でいろよ…」
「…ヅラじゃ…ない…桂…だ…」
ふたりはじっと見つめ合った。そして小さく笑った。


…皆で相談して解散出来たのは良かったと、銀時は思った。
ヅラには辛かったかもしれないが…と。
大きな戦いの後に、みな死んでしまっての解散より、なんぼも良い!
それに「これが最後の闘いだ」などという、恐ろしい闘いも無かったことは、
本当に良かったことなのだと思えた。
…「これが最後だ」などという闘いが起きたら…

ヅラぁきっと…きっと無茶苦茶に闘って。
死んでもいいと思いながら闘って。
そしておそらく本当に死んでしまったかも知れないからな。
今までの、死んでなるものか!という気迫以上の闘志を胸に、
それは恐ろしい形相で…
……そんなヅラを見ないで良かった…
喧嘩などしないで別れられたのも、良かったなあ…うん…




銀時は顔を上げた。
空を見た。
あの日、あの時に、何度も皆で見上げた空。
夕日に染まる山並を見た。
風に吹かれながら、白い雲を目で追った。
茜色の空を飛ぶ鳥たちに、その自由さを羨ましく思いながらも、
明日こそ!の気持ちを奮い立たせながら肩を叩き合った。
そして笑い合った。
大声で笑った。
傷の痛みさえ忘れられるような、死の恐怖さえ忘れられるような、
そんな同志の笑みが、振り向けばいつもそこに有った。
右にも左にも、もちろん前にも有ったのだ。
確かに確かにそこに有ったのだ!
俺たちは、そんな仲間と共に闘えたのだ。

心から信頼出来る背中に護られながら。
護りながら。

そんな日々を、俺たちは互いに持つことが出来たのだ!
この身体に付いた傷は、そんな朋友を護れた証しだ。
だが心の中に燃えていた志には、天人たちの剣は届かなかった。


あの日に
あの時に
俺たちの心の中に
同じ「光」が生まれたのだ

……楽しかった…ねえ…うん……!



銀時もどこか満足しながら、遠く長く伸びる道を、真っ直ぐに進んだ。
前だけを見た。
心の中にある空しさを見ないように。
勝てなかった悔しさと向き合わないために。
……いや、勝とうと思って闘っていた戦ではないぞ。
はあ?…そんなの戦って言うのかいよ?…へへ……

…………口元に笑みさえ浮かべながら。




ひとりどこへ行く、銀時。









@@@
この前に先生に拾われた小さい銀時と小太郎や晋助とのなつかしい日々とか
黒夜叉と出会って高杉が目を斬られちゃうところとか
戦争中のいろいろだとか
この後にはポニーテールの土方だとかが出て来る…★

えっちなところはUP出来ませんけれど
少しでも雰囲気を味わって下さいね。
静かな、そしてどこか温かな音楽が
似合うと思われます。

完成=発行をお楽しみに~
頑張ります!
応援して下さいね。

ぜひイベントでお会いしましょう!





★銀ネコ、ヅラネコに首ったけの私です!
あのぬいぐるみ発売されないかなあ?
あの目つきの銀ネコにもうもう~!



みづき















 

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