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前回の「日々原稿中」にたくさんの5つもの拍手!
どうもありがとうございました!
その5人の皆様に向けて、いえいえ勿論いつもここに来て下さっている方の為に
迷っていた原稿UPを致します。
「日々原稿中」に書きましたあたりは
このような小説文章に仕上がりました。


「絶望の淵を泳ぐ金魚」
神威が団長になる前~団長就任あたりまで。
鳳仙の下で修行中の少年神威は寂しさを抱えていた
だがそんな時に阿伏兎と出会って知った
初めての「恋心」
金魚鉢の中で暮すような不自由な生活の中で見つけた
神威の愛と喜びと哀しみのエピソード

http://mizukijoe.sfcgi.com/kingyo-oshirase1.htm


阿伏兎×神威 「絶望の淵を泳ぐ金魚」その1



こんなに深夜になるまで働いている俺って…
まったく以って偉いよなあ…


阿伏兎は時計を見るのも億劫そうに首を回した。
もう大分遅い。
眠気も最高潮だ。
目を擦り伸びもした。
机の引き出しを開けると、煙草とオレンジ色のライターを取り出す。
煙草を一本抜き取ると、そのライターで火を点けた。
ふううっとゆっくり煙を吐き出す。
紫煙が部屋に流れてゆくのを、阿伏兎は目で追った。


残りわずかな酒の入ったグラス。
小さな灰皿。

阿伏兎は夜になり自室に籠って書類仕事を片付ける時、
いつもこれらを用意していた。
自分ひとりの時間を楽しむわずかなアイテム。
だがそれだけで充分だ。
寝る前の、ほんの少しの、今日の自分へのご褒美…


ライターは安物の百円ライターだ。
だが深い意味がある。
阿伏兎はこのライターを買った日に、神威に出会ったからだ。



「もうとっくに眠ったろうな…」
別の部屋に眠る神威は、自分の護るべき少年だ。
この神威の住む鳳仙の屋敷に寝起きするようになって、
そろそろ一年が経とうとしていた。
神威は12歳。
自分はその監視役として鳳仙に雇われた。
いや、まるで強迫めいた神威の手の込んだ作戦に引っ掛かり、否応なしにこの仕事に就いた。
否と答えると殺すと鳳仙に言われたからである。

その時のことを思い出しそうになって首を振る。
煙草を揉み消すと、グラスを傾けた。
「ちっ…すっかり薄まっちまった…」
氷が溶けて薄まったウィスキーを一気に喉に流し込んで
立ち上がった。



阿伏兎は足音を忍ばせながら廊下を歩く。
昼間は多くの使用人が居るこの屋敷内も、夜には神威と阿伏兎しか居ない。
数人の夜警の人間、天人は門番として玄関脇に夜通し立っているが、
屋敷の中は二人だけだった。
前には屋敷内の警備員がひとり宿直として居たらしいが、
阿伏兎が住むようになってから居なくなった。
「夜兎の元傭兵が居るのだから心配はいらんな」
雇い主鳳仙の言葉だ。

これには大きな意味が有った。
「阿伏兎よ、お前の任務は神威を護ることである」と
毎日無言の重しが阿伏兎を襲う。
非常に重いプレッシャーだ。肩が落ちるくらいに。

春雨に対してそれは深い恨みの有る阿伏兎は、特攻を覚悟して春雨船に潜入した。
が、取り押さえられた所に神威が現れ、その命乞いをして救ってくれた。
その神威に選ばれて監視役を担ったことを忘れてはならないという、大きなプレッシャー。
鳳仙はこれを直接阿伏兎に言ったわけではない。
だがいつも言われているような気がするのは、
阿伏兎自身が鳳仙という春雨幹部の真の実力を認めているからであるのだが。


ここは鳳仙の屋敷だ。
神威は鳳仙にその能力を見出されて弟子となり、故郷の星を出てここへ来たのだという。
だが春雨幹部として重要な任務に就く鳳仙はあまりこの屋敷に来ることは出来ないでいた。
他の星の屋敷にも、何人も女を囲っていると聞いた。
忙しすぎる、無理からぬことだ、その身が幾つ有っても足りないであろう。

だが鳳仙の、神威に対する気持ちは本物だろうと窺える。
「やがてはわしの後を継がせる予定だ」

春雨第七師団は、猛者の集団として春雨内でも稀有な団であった。
その団長職をのちのち譲ろうとの考えだ。
ひとつの屋敷を宛がい、使用人や家庭教師などを多く雇い、
闘いの修行のために多くの戦士が代わる代わるやってくる状況を考えれば、
鳳仙の神威への入れ込みようは分かると言うものだ。
大体鳳仙の、神威を見る顔で分かる。

いかにも帝王という怖い風貌の、いかつい身体つきの鳳仙。
だが厳しい表情の中にも、神威を見る目には温かいものを感じることが出来るのだ。
そして傘を持って闘いの稽古をする。
鳳仙は神威と傘を持って闘っている時がとても楽しいらしい。
神威の成長ぶりが傘から直に伝わってくるのだろう。

息を切らしながら言うことには…
「阿伏兎君、神威は大きくなったねえ」
「へい旦那。傘の力もだいぶ強くなってきたと…」
「ふむ。どうだね?神威はちゃんと言われたことを守っているかな?」
「さあそれは、旦那…家庭教師の宿題を放り投げることもありますけどね」
「ははは。わしも小さい頃はそうだったなあ。ははは」
鳳仙は神威が息子のように可愛いらしい。
俺は神威の困った状況を報告したのに、笑うだけだ、あああ。
言葉にも態度にもそれが表れているなあ…


自分が見つけてきた才能ある夜兎の子ども、神威だ。
将来を期待する気持ちは、親子のそれと近いものがあるのだろうと阿伏兎は思った。
噂に聞く猛者の頭「鳳仙」の冷酷無比、戦場では負け知らず、などという顔と、
この神威の成長を笑いながら見守る父親のような顔と、
阿伏兎はふたつの鳳仙の顔を知ることとなったのだ。
だからそんな鳳仙の、阿伏兎を信頼してくれているのか、
面倒な事はお守り役のお前に全て任せているとでも言いたげなその表情の奥には
「神威に何かあったらお前を殺す」
という重い命令が潜んでいることは、阿伏兎にも充分過ぎるほど分かっていたことなのである。



神威の寝ている部屋に着き、そっとドアを開けて中に入った。
鍵はいつも掛かっていないのだ。
いつでも阿伏兎が様子を見に入れるようにと、鍵は取り外してしまった。
神威が、である。


「いくら何でもそりゃ無防備というもの。万が一賊に襲われた時、
鍵が掛っていれば多少は時間稼ぎにだってなるんだぜ?」
「俺がその賊だったらドアを蹴破るけど」
「…(汗)まあ…ね。お前さんならそうするだろうね…」
「それに大体この屋敷の門や塀を、守衛兵に見つからずに越えられないよね」
「…まあ…ねえ…あの云業が居れば、な」
「もしも幸運にも屋敷内に入って来られたとしても、
俺の部屋に着くその前に阿伏兎がやっつけてくれるでしょう?」
「…ふむ…もしも俺がやられたりしたらどうする?」
「え?俺、そんな弱い部下は要らないや」
「まだ部下ではないぞ、神威。俺は正式にその返事をした訳じゃねえからな」
「ええ?阿伏兎に選択肢は無いんだよ?もう決まったことなんだよ。
あれ?こういうの何て言ったっけ?ええと、『往生際が悪い』…で正解?」
「………正解だ。○を付けてやろう、ちっ!」
「あはは、阿伏兎ってば面白いね~」
そんなやり取りが有ったのだ。


暗闇に、廊下の明かりがわずかに部屋を照らした。
ベッドに潜り込んで寝ている神威を認める。
珊瑚色の髪が見えたからだが、その頭がくるりとこちらを向いてにこりと笑った。
「遅いじゃん…阿伏兎…俺、ずっと待ってたのに…」
「…起こしたか…悪いな…」
「起きないわけ、ない…阿伏兎の足音、阿伏兎の息使い、阿伏兎の動く気配、
阿伏兎の熱くなり始めた鼓動…ふふ…
…離れていたってもう全部俺の耳に届くよ…俺の中に全部インプットされてるよ…」
にやりと阿伏兎が笑った。
「…なに…熱くなり始めた鼓動だと?へええ。そんな事が分かるのか?」
「もっちろん…だって…阿伏兎の恋人は俺だもん…」
恋人ねえ…近からず遠からずだ。
「俺が欲しくてやって来る阿伏兎…だもんね…」
無言で口角を上げ、阿伏兎が目を伏せた。
「…俺も…阿伏兎を待ってたんだ…」
じっとその青い目に見られると、阿伏兎の身体に電気が走るようなしびれが襲う。
このしびれによる熱い刺激は、
阿伏兎の理性をいつも大きく揺るがしてしまうのだ。
湧き上がる情欲。
勃ち上がる猛り。
熱くなる体温。
それらに突き上げられ、神威のベッドへその身を滑り込ませた。
「くす…阿伏兎…だから鍵は要らないって言ったんだ…」
阿伏兎は神威のまだ細い腕に抱きしめられた。




@@@
少しでしたが雰囲気が伝わりましたでしょうか?
この先はえっちだから(笑)
次回は少しあとをUpする予定です。
64P小説本になる予定。
ここまでで約4P分。

阿伏兎の特攻を決意してライターを…のあたりと
鳳仙が少年神威に初めて出会った時のこととかは
「螺鈿」に詳しくあるので
少々被っているところもあります、ご了承ください。

「tenderly」の方も
「螺鈿」の方も
夏コミまでにもう少しUPする予定です。

ぜひまた拍手で応援して下さいね。
続きを読みたいという拍手の人のために、また書いちゃおう★



日食楽しみだワ♪




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