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月詠は身体をそっと起こして、帯の後ろに携えた小刀の鞘を外す。
そして帯を緩めた。

「へええ…なるほど…そうなってたんだ…」
月詠は銀時に答えずに、自身の着物の襟にもその手をかけたが…
「おおっとお~いい。ちょっとお、待て待て待て、月詠!
そこからは俺にも出来る。やめてもらおうか。
この先は俺の自由にさせてもらう…いいだろ?」
「……(にやり)あい…分かったでありいすよ…」
「その郭言葉も無理して使うな。
遊女を相手にしている気分は避けたいのさ。普通にしゃべれば?」
銀時が先程の心中とは反対のことを口にする。
まったくこれだから男ってえヤツは…と女である作者も言ってみる。


「残念~。もうこれは口癖になっているからの…
普通の言葉使い?何だそれは?
そんな言葉使いなぞ、とっくに忘れてしもうたわ。無理でありいすよ。
それこそ右利きのやつが左で箸を持つようで、非常に苦しいものになっちまうでありいす!」
「ええ?そんなものなの?」
「そう…仕込まれるんでありいすよ…小さい内に…里の言葉が出ないようにな…
吉原の遊女はの、田舎娘が多い故…
地方訛りを消すための言葉使いなんでありいすよ、郭言葉というやつは…」
「………そうなのか…」
「そうなのよ!これでいいか?くすっ」
「はは…なんか妙だ。可笑しいぞ?そりゃ」
「だろう?ははは」

銀時は月詠を抱きしめた。
月詠も抱き返すように銀時の背に腕を回した。
そして銀時の肩にもたれかかる。


「……銀時……普通の女で……いいのでありいすね?…」
「…ああ…いいぞ…自然にしてろ…」
「わっちに…出来るでありいすか?…
あまりにも吉原で長く生き過ぎてしまったわっちに…
女であることを棄てて生きて来たわっちに………」
「ん…無理しない程度で…いいさ…」
「…あい…出来るだろうか…」
「出来るさ…その着物を脱いで見せろ…全部…俺に…」
「…ぎ、銀…時…わっちは…わっちは…」
「月詠…女になれ…いま…俺の前で」

「あ、明かりを…銀…とき…」
「……消さねえぜ…」






この後はもう…あれやこれや、です。



しかしWJの方で月詠があまりにも痛々しくて…
あんな目をした月詠が…!
でも銀さんがかっこいいですね!
あのラスト2Pの、銀さんのかっこ良かったこと!
「その女」ねえ…
「俺の女」にしか読めないわ。
あ、そうか、夫婦設定だったんでしたね。
それも銀さんが言ったんでした。
GW明けまで続きが見られないなんて残念ですう。

私はまた銀時×月詠の話を書く事を決めました。
このWJでの連載が終わったら、またここで書きます。
本にするかどうかは未定ですけれど。

銀時×月詠
「tenderly」



さて拙著「目覚めなければいい」のお話にも
月詠はたくさん登場しています。
土方に「いくらでヤらしてくれるかい?」なんて言われたり
阿伏兎に「今度はゆっくり会いたいねえ」なんて言われてますが
月詠は「あぶなんとか!」と、名前が覚えられない(笑)
ですが後半では銀時といい感じです♪











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城みづきの
銀時×月詠小説 「shine」は
今週末の3/15のHARUコミックシティにて発表されます。
ぜひお手に取って頂けますよう、よろしくお願い致します。

スペ番  西2 O-12b  緋桜流

多くの応援拍手やコメ、メールなど、本当にありがとうございます!(泣)
とても励みになりました(泣)
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好評なら続きも書きたいと思っておりまする!






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銀時×月詠  shine その3 09.3.11




「ちょ…銀…時…ま、待て…あ…」
「…待てねえって…言ったろが…」
銀時は月詠の太ももを撫で続けて語る。

「まあ、待て…頼む…ちょ…ああ…」
「…なに焦ってるの…」
「あ、焦ってなど…おらん…焦っているのはその、えと、…主ではないかえ?…」
「あ、焦ってねえって…いや…え?焦ってる?おれ…?」
「ああ、焦ってるぞ…そんなにしたら…タイツが破れる…どうしてくれる?…高いぞ、これ…
言っておくが…これもブランドものなのだぞ?…くすっ」
「おおそうか…まずいまずい…水商売の女が身に着けているものってば、
弁償出来ねえ値段だからなあ…はは…」
「そうだ…はは…」


まあ、金が無さそうなのは最初から分かっていたことだが、
なんと可愛らしいことを返す男なのだ、こいつは…

だが口ではそう言いながら、太ももを撫で上げる手は休みなく動いているのが可笑しい。
それもその力が減っていないのだ。
高い品だと教えたはずなのに。
せわしなく動き続ける銀時のその手。
その目も笑っていた。
だが気分は悪くないというのが始末に困る。


月詠は銀時のその目を見ながら、後で結い上げた髪を結んでいる紐をほどいた。
髪に差したクナイのかんざしも取る。

「ヲ、ヲイ…投げる気か?それ…」
「おお…投げて欲しいか?また…」
「いやあ、もう勘弁…」
「ふふ…」

笑いながら髪をほどく。
カフェオレ色の髪は肩まで流れ、その端正な頬と肩のラインを覆った。
銀時は月詠に跨ったまま、すっと目を細めた。

「…ん…」
「なに?」
「お前……好みだなあって思ってさ…」
「へん…男の常套文句だろうが…それは…」
「ヲイ!言っておくがな。今俺は女郎を買ったんじゃねえぜ?」
「だろうな。主にそんな金は無いからの」
「ちっ!当たりだが当たりじゃねえ。
俺はお前とやりたくて此処に居るんだぞ。
お前はどうなんだ?」
「…」


何なのだ?この気持ちは…
ただ付いてきてしまった自分。
断れなかった自分…
客に請われて付いてきた…でもない。
ましてや銀時を好きだなどと思っている訳でもない。
…いったい何なのだろう?


『共に危険な冒険をした男女は必ず恋に落ちる』
…?…何かで聞いたな?
『スピード』とかいう映画の中だったっけか…
じゃあ今こうしているのは『恋』なのか?
まさかあ……あはは…
月詠がひとり考えているこの間にも、銀時の手は太ももを撫でている。
『足』が好きな男なのだなあ…と笑っていると…


「…ん…綺麗だ…お前…」
「…歯の浮くようなことを…」
「世辞じゃねえぜ?…んと、最初に出会った時から…
そう思ってたんだからな…」
「銀…時…」
月詠の胸の中を、温かいものが流れ始めた。


わずかに汗の匂いがした。それは自然なままの女。
化粧を施した遊女ではない、生きているままの、女。
だが恐ろしく綺麗な肌をしている。

こいつは確かに遊女だったが、それはこの持って生れた美貌のおかげであったことも事実なのだ。
どこかの町で生まれ、口減らしの為に吉原に売られてきたのだろうか。
日輪を護るためだけに吉原で生きることを決心したと言う
自身の口から語られた身の上話が本当なら、
過去にはそれ相応に男相手の夜を過ごしたはずだ。
それなりの技も持ち合わせているのだろう…
この美しい首のラインに口付けた男の数を数えるなどという野暮はしたくないまでも、
この女に溺れた時間を持った男が複数居たことに、
胸の奥がざわめくのを止めることが出来ない。
その技を見たいという気持ちも湧いてくるのを止めることが出来ない…

嫉妬と羨望と色欲と…まったくこれだから男ってえヤツは…などと銀時は自嘲する。
が、その手は止めない(笑)
むしろそういう女をいま、組み敷いている気分に高揚してくる。


そうだ…いま、この女を抱くのは自分だ…と。










 
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銀時×月詠 shine その2



小さな宿に部屋を取り、座卓に置かれた銚子を手に、
月詠は少々首を傾げて銀時を見た。

「…わっちからも礼を込めさせてもらう…ほれ…」
「…ああ…」

猪口を持つ手が震えそうになるのを銀時は必死で抑えた。
闘いの後、あの日輪から注がれた酒も極上の味だったが、
この月詠からもこんな酌を受け取ることになろうとは。

男相手の商売をしつつも、己の光を失わずに生きて来た女たちの、
哀しくも身についてしまったこの美しい仕草。
だが銀時が震えそうになったのはその仕草にではなく、月詠の細い指の美しさに、だった。

…この細い指であのクナイを巧みに操るのか…
触れてみたい…


「…?ほれ…何かありいすか?」
「…いや…何でもねえ…」
猪口をすぐに口へ運ばない銀時を月詠は怪訝そうに見やる。
そんな月詠を見ることも叶わずに、思いついたように銀時はその猪口を傾けた。
「…うめえ…」
酒が欲しかったはずの喉は、そのぴりりとした刺激に歓喜するが、
喉だけでなく銀時の心のどこかも潤してくれるようだった。



銀時は特別に酒が好きだと言うほどではない。
少量ですぐに酔っぱらう程に弱い。
だが酒を飲む時間やらその状況を殊更に愛せるタイプだ。
気の許せる友人らとのかけがえのない時間にあおる杯は、
この世で最も上手いものと思っている。
それは値段の張る高級な酒で無くとも、野郎の注いでくれた酒であっても、
たとえばそこが屋外であろうとも汚い安酒場であっても、
皆で笑いあって飲める酒が最も好ましいと思えるのだ。
それが銀時の喉を、心を潤す。
自分自身を癒してくれるその時間と状況を、何よりも大切に思ってしまうのだ。


そして今のこの状況…
共に闘い、修羅場を乗り越えて繋ぎ留めることの出来た命。
そして繋がれた心の絆…
あの時の戦友で有り、「女」……
そんな相手が今、自分に酌をしているとは…
銀時の胸が高鳴る。
そして月詠も自身の胸がざわめき始めるのを感じていた。


「ほら…お前も…」
「…うん…じゃ…」
月詠の猪口にも酒を注ぐ。
猪口に注がれる酒の流れる音はごくごく小さいもののはずなのに、
何故かふたりには大きな音に聞こえるような気がする。
もしかしたら自分の鼓動も、こんな大きな音を立てて相手に聞こえているのではないか?
と思ってしまう。
おそらくこの後、この酒よりも自分を潤してくれるだろうこの眼の前の相手に、
期待と不安とが入り混じった心うち…
妙に照れてしまいそうになるのを、互いに我慢しているような時間だった。

「う、うまいでありいす…」
「っへへ…そか…」
小さく微笑む互いの口元がどこかぎこちないのはそのせいだった。


「さ…肴は…おめえが…いいな…」
思い切って言ってみる。
「……わっち…も…主が……いい……」

この言葉に勇気が出た。
銀時は対面の月詠ににじり寄る。
その時間さえ月詠には照れくさく感じてしまう。
そっと肩を抱かれて銀時の髪が自分の頬をかすめた瞬間、
月詠は思わず後ずさりしてしまった。
だが銀時はその動きを許さない。
更に力を込めてその肩を抱きしめて、その顔を覗き込んだ。

「…ちょ…と…ぎん…」
「……んだよ?…」
「…な…なんか…照れくさいで…ありいす…ちょっと…
待って…くれないか?…は…」
「…待てねえ……」
「あっ…」

そして静かにその白い睫毛が閉じられた。
銀時という獣に捕らえられた獲物になってしまったような錯覚を招く。
抵抗すればするだけ、その強い腕に抱きしめられた。

月詠は銀時にその身を預けるようにゆっくりと力を抜いた。

(中略)

「…あっ」
「わ、悪い…痛かったか?…」
掠れ気味の声。荒ぐ息で答えるのその声に、銀時の焦りを見た月詠が答えた。

「…急がないで…くれで…ありいす……」
「…んだなあ…くす」

小さく微笑んだ銀時は、月詠をさっと抱きかかえて、布団の上へ移動した。
その、瞬時に軽く抱きかかえられた自分が客観的に見えて、
当たり前ではあるが、自分とは違う「男」の力にはっとする。
焦りを感じているのは自分ではないか…
月詠はますます照れてしまいそうだった。








 
次回本の予定になっている「螺鈿」より先に
こちらが発行になるかもしれません。
予定では3/15春コミ。
まだ合否が出ていませんが。


「shine」

銀時×月詠 

吉原炎上編の後日談的なお話。
18禁ですので、自己責任のもと、お読みください。










shine その1


 どうしたって敵うものではない
 そう思ったら負けだ

 たとえどんなに敵わなくとも
 全力で向かう
 それが俺の闘い方だ
 昔も今も


鳳仙との闘いを思い出しながら、銀時は空を見上げる。
メタリックな天井に覆われた町「吉原」には無かった空…

ここはかぶき町、いつものように賑やかな町だ。
当然太陽も雲も存在し風も吹く。
青い空に白い雲。
人々の笑い声、車の走る音。
あたり前のように存在する「今日」という日。
そんな中ざわめく心。



多くの死者を出した壮絶な闘いだった。
銀時も、神楽や新八も怪我をした。
地下遊郭吉原桃源郷における自警団「百華」内にも多数の死者、怪我人が出、
その頭である月詠も大怪我だった。
やっとのことで皆、その生をつなぎ止めた感がある。
今、あの闘いを思い出してもよく生き延びられたと思う。

銀時は未だ疼く脇腹の傷痕にそっと触れた。
やっと包帯が取れたものの、痛みが続く。
腕や足、背の傷も時折痛んで、あの闘いのすさまじさを、否が応でも思い出してしまうのだった。


過去多くの敵と争ったが、ここまで歯が立たない相手に出くわしたことは無かったのではないか?
かの攘夷戦争時代に剣を合わせた天人を思い出してみても、
異常な強さを持った敵に出会った事は多々あったにせよ、
たったひとりにあんなに手こずるなんてことは有っただろうか?
いやあの頃は若かったのだ、体力も気力もあった、それに「死」を怖がることは無かったのだ。
だが今はもうあの頃ほどの力は無い、
もう年を取ったんだし……
いいや、まだそんな年じゃないと思っていたんだが(苦笑)

疼く傷のその治りの遅さに、負傷しても次の日には戦場に立った昔の自分との明らかな違いを自覚せざるを得ない。


「死」を怖がらなかった…大仰な言い方かも知れぬが、確かにあの頃の皆はそうだったと思う。
自分達が闘わないと地球が、江戸が、天人に侵略されて植民地になる…
その恐怖との闘いだったような気がする。

大事な恩師をその為に失い、戦友達は次々に倒れて行ったにもかかわらず、
自分が死ぬことは勘定に入れなかった…いや、その「死」を考えないようにしていた…

それが正解か。
死を怖がらなかったのではない。
考えないようにしていたのだ…皆…
だから闘えた。だから剣を振るうことが出来た。

今考えるとその若さゆえの思い上がった自分達にぞっとする。
何故にあんなに無茶が出来たのだろうと。
俺達は強かったのだろうか?本当に?…否。
ほんのわずかな偶然や何かが自分に味方してくれて生き残ったにすぎないのだ。
これは確かだ。
だからこれもそんな偶然の賜物なのだ。
死んでいたっておかしくない状況だった。
これも確かだ。



「死」を考えた闘いだった。
もう駄目だと思わざるをえなかった。
だがそれを考えてしまっては負けると思った。
だから勝つ、負けるを考えないようにし、「護る」ことだけを考えた。
何を護る?自分か?晴太か?吉原か?
具体的な物を考える余裕もなかったと思う。
ただ、「護る」ことだけを考えたのだ。
それは一体何だったのか?
多くの死者を出してまで…




傘の一振りで多くの遊女を殺害した鳳仙。
自分もその剣を合わせて、たった一撃受けただけで、
闘う気力も体力も全部持って行かれた気分になり、屈服しそうになった。
息を吸う時間も瞬きさえ出来ない緊張の連続。
一瞬でも余所を見ようものならその隙に殺されてしまう。
わななく筋肉、震える腕、きしむ足、白眼は血管が切れ、
刀は折れた。
とても敵うものではなかった。

あの力が戦闘種族夜兎の力。
闘うために生きている種族。

鳳仙に勝てたとは思えない。
皆で袋叩きにしたから、たまたま太陽が味方してくれたから勝てた。
それだけだ。



もしもこの先にまた夜兎との闘いがあっても、次は必ずやられるだろう。
あの、神威とかいう星海坊主の息子、神楽の兄の力はきっと鳳仙を上回るに違いない。
あのハゲの片腕を落とした、鳳仙の弟子だという神威。
妹神楽を襲った一撃はすさまじかったし、巨大な夜兎の攻撃を受けて自分は吐いた。
月詠を襲った夜兎も、その身のこなしぶりからして歴戦の戦士を思わせた。
その夜兎らと闘っても決して勝てないだろう。

だがその神威は俺を狙っている…
俺を殺す気でいる…
俺を事実上の人質にして吉原を残したのだから。




「その時」が来たら、自分ひとりで闘おう。
もう誰も傷つくのは見たくない。
神楽にそれを見せたくない。

そう決めていた。







静まりかえった万事屋。
誰の声も物音さえしない、珍しい日。
今日は新八も来ていない。
神楽も定春を連れてどこかへ出かけたらしく、万事屋に銀時はひとりだった。

窓に腰掛け、静かな時の流れに身を任せて、ただ雲が流れているのを見ていた。
「ちっ…痛え…もう若くないのかあ…はは…」
銀髪をもて遊ぶ風はどこか温かかった。



西の空が茜色に染まり始め、夕闇が迫ってくると、銀時は空腹を感じてのそのそと立ち上がった。
「ちょっくら感傷的になっちまった…酒でも飲んでくっかなあ…」

残りわずかな財布の中身を気にしながらも、銀時は街へ出た。
家路を急ぐ人々、飲み屋を探す人々、いろいろな顔を持つこの大勢の人々にも
それぞれに帰る家が有るのだろう。
ああ、俺にだってあるさ。
確かに最初この町は仮の場所と思ったものだが、今では大事な住処となっている。

煩わしさも楽しさも、すべてをひっくるめての「住処」。
この町に帰ってきたことを今、実感し安堵する。
この町は平和でいいねえ、などと悠長に考えながら、
銀時は今夜喉を潤してくれる酒場はないかと、当てもなく歩いていた。
だが「この町の賑やかさ」が、実は銀時の本当の意味での潤いになっていた。





「おや…銀時ではないか」
「お?なんでお前がここに?」

カフェオレ色の髪を後ろで束ねてクナイのかんざしを挿したこの女性は月詠だ。
「用事があってね…ちょっくら地上に来たのさ。なに、
主の住処はここいらでありいすか?」
「ああ、そうだ。だがあれ以来だな。傷はどうした?」
「もうすっかりいいでありいす。主はどうだ?」
「ああ、俺ももうすっかりいいぜ。回復力なら人並み以上なんでね、俺ぁ」
月詠の前では大見栄を張る。

「そうか、良かった、ほれ!」
月詠は銀時の腹の辺りをつっついてみる。
容赦ない強い力。
「痛てて!や、やめろ!」
「嘘はバレてるでありいすよ?だって猫背で歩いていたものなあ、お主…」
「ちっ。いつから見てたのコノ…」
「ふん…」

月詠が目を細める。
そんな笑顔は初めて見るものだった。
あの闘いではゆっくりとその笑顔なぞ見る余裕も無かった。
鳳仙に向かったあの月詠は「戦士」だったと思う。
あの時にわずかに見せてくれたその口元を緩めた微笑みも、
綺麗だなどと思える時間も無かった。
今目の前に居るこの女と共に、ひとりの敵を倒す為に闘ったのだ…
信じられねえな。互いに生き残っただなんて…



改めて見る月詠は、その頬や額の傷など気にならない程の美しさだった。
その澄んだ瞳、薄い色の髪は地毛だろう、
顎から首にかけての細い線は、匂い立つような色気を放っている。
生意気とも思える言葉を発するその唇の薄桃色の艶は、他に類を見ない。
銀時の胸の中に、温かい熱が湧いた。
その熱は次第に確固たる炎になりつつあった。



「なあ…時間あるか?」
「はあ…?何だ、酒でも飲むでありいすか?」
「いいねえ。行くか」
「まあ…用事は済んだし、後は帰るだけだったのさ…ふむ」
「おう…なら付き合えよ。ちょっとぐれえいいだろ?」
「ふむ…じゃ…」
月詠は小さくにこりと微笑んだ。


人混みの中を並んで歩く。
付かず離れず、適当な間。
実によく「今の俺たち」を表している距離だなあと感じる。だが、
…俺たちはどう見えるのかな?恋人に見えるのかな?…
ちょっとどきどきするねえ…とは銀時の心中。
だが月詠はそんな銀時の心中なぞお構いなしにまっすぐ前を見ている。
ちっ…ちょっとぐれえこっちを向けっての。


「何処か知っている酒場は有るでありいすか?銀時」
「ああ、連れてってやる…酒も飲めてふたりだけでゆっくり出来る所…
そんな所でいいだろ?月詠」
「え?…」

月詠が目を見張る。
そんな気は無かったのにという顔。

「やっと助かったんだ…生きてるって感じ合ってもいいんじゃないか?俺たち…」

銀時がじっと…どこか優しげな温かいものを含ませた瞳で月詠を見た。
だがその目の奥に「否」とは言わせぬような力強さも見える。
この目の光はあの闘いで見せたこの男の、芯の強い性格からなのだろうか。


会ったばかりの頃の銀時の目とまるで違う。
そう言えばこいつは最初に会った時にも大見栄をきっていたの…
だがどこか覇気のない、どうでもいいよ的な目をしていた。
しかし闘いに挑んだ時のこいつの目の光は本物だった。
闘いの強さではない、芯の強い目だったことを思い出す。

燃え盛る炎のような、暮れなずむ夕焼けを思わせるような赤。
その赤は、あの時になんとまぶしく光ったことだろう。
その赤い目が、自分をまっすぐに見ている…
こんな目もするのだな…あの男と同一人物と思うと、
この優しげでありながら有無を言わせぬ強い光を湛えた眼に、月詠は引き寄せられる。



「行こうぜ」
「…」

月詠は言葉が出ない。
だが小さく頷いた。












 

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